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自分の行動を考えるきっかけに! 2024年度 みんなのBIWAKO会議/COP3ーvol.04 第3分科会

9月6日(金)に開催された「MLGsみんなのBIWAKO会議 / COP3」で行われた、第3分科会の様子をお届けします!

▼開会式・全体会の様子はこちら▼

2024年度 みんなのBIWAKO会議/COP3ーvol.01 開会式・全体会2024年9月6日、ピアザ淡海にて「MLGsみんなのBIWAKO会議/COP3」が開催されました。琵琶湖版のSDGs「マザーレイクゴール...

第3分科会のテーマは、「MLGsとネイチャーポジティブ経営」。

ゲスト登壇者は、積水樹脂株式会社コーポレート戦略本部 稲垣和美さん、特定非営利活動法人カーボンシンク事務局長 堤幸一さん、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター総括研究員 金 再奎さんの3名です。

滋賀県琵琶湖環境部 環境政策課の奥村浩気さんによる進行がスタートしました。

びわ湖は奇跡の湖!まずは、高ポテンシャルの認識から


なごやかな雰囲気で始まった第3分科会

まずは、司会の奥村さんから「ネイチャーポジティブ」の単語について、説明が行われました。ネイチャーポジティブとは、日本語で「自然再興」。自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、回復させることを指します。

また、ネイチャーには、原生の自然のイメージがあるものの、地域資源や地域ポテンシャルの方がしっくりくるのではないかと思うと説明がありました。

さらに、今回の「BIWAKO会議」に関連し、びわ湖に関する話題も飛び出します。滋賀県出身、父親が沖島で漁師を営んでいたという奥村さんにとって、びわ湖はあまりに当たり前の存在。しかし、調べれば調べるほどびわ湖のすごさに気づいたといいます。


びわ湖のポテンシャルを熱く語る奥村さん

「世界には100ha以上の面積の湖が845万以上ありますが、多くは1万年、長くても2万年で消滅しています。古代湖と呼ばれる約20の湖のひとつが、びわ湖。びわ湖は、知れば知るほど感動できる奇跡の湖です。まずはみなさんもびわ湖のすごさを認識し、取り組みを知ってほしい」と語りました。
そして、参加者に配布された「シン・びわ湖なう2024」に触れ、ゴール3の「多様な生き物を守ろう」の評価や傾向について解説。今回の分科会参加は、滋賀県をネイチャーポジティブな地域にするためには、どうすればいいのか考えるきっかけにしてほしいと話し、ゲスト紹介へと進みました。

一緒に課題を乗り越える、関わることが重要


ネイチャーポジティブには社会変革が必要と語る金さん

自己紹介を終えた金さんは、生態、環境、経済などの複雑な要素は、バランスが一番大事と語ります。さらに「MLGs、ネイチャーポジティブ、カーボンニュートラル、ネット・ゼロ、これらすべては、今、暮らしているみなさんが豊かさを感じつつ、環境・経済・社会のバランスがとれた持続可能な社会の実現を目標とするものです」と説明。

また、今回のテーマがネイチャーポジティブ“経営”であることに触れ、経済の話にも言及。「関係者の話では、ネイチャーポジティブは47兆円の経済効果が見込めると言われています。また、滋賀県の場合、全生産額の約2%をカーボンニュートラルに費やすと、カーボンニュートラルとネイチャーポジティブが実現可能です」と具体的な数字にも触れていました。


一方で、企業はCO2の排出削減や日本の生物多様性の保全など、やるべきことが増え、負担が増えます。しかし、ネイチャーポジティブに関しては、今後利用できない自然資本が増加すると断言。その結果、資源の争奪戦が激しくなると語ります。

最後に金さんは「ネット・ゼロは、CO2を削減すればいいわけですが、ネイチャーポジティブはそうはいきません。さまざまな影響を把握した上で、持続可能な調達が必要」と、話をまとめました。


頑張って取り組む企業の応援が大事と話す堤さん

続いて、堤さんは現在の自身の立場を「企業と一緒に、企業活動をプラスに変えていく立場」と説明。企業活動を変えることは、環境にも良いといった話から始まり、すでに国際的な動向は無視できないところまで進んでいると語ります。

さらに、ネット・ゼロ、ネイチャーポジティブ、サーキュラエコノミーに加え、4つ目のテーマに来るのは「人権」。近年耳にする機会が増えたフェアトレードのように、今後は労働時間や給料を含め、示された基準を満たしていなければ、取引自体ができなくなると話しました。

また、「アース・オーバーシュート・デー」「エコロジカル・フットプリント」 などにも触れ、最後に「企業の立場だけでなく、1住民、利用者、消費者として考えたときに、頑張っている企業を応援できるかどうかを考えることが大事。一緒に課題を乗り越えていけるようにやっていくことが、ネイチャーポジティブ経営のポイントになる」と述べました。

エコロジカル・フットプリントとは、人間が生活する上で自然資源や環境へ与える負荷を、地球の面積に換算して表現する指標です。この指標は、人間の生活や活動が地球環境にどれくらいの影響を与えているかを数値化したものです。

エコロジカル・フットプリント(右図)投影資料より
(出展:WWWジャパン2015地球一個分の暮らしの指標)

 

アース・オーバーシュート・デーとは、その年に人類が利用できる地球の自然資源を使い果たす日を示す指標です。この日以降、人類は地球の再生能力を超えて資源を消費し、持続可能な範囲を超えてしまうことを意味します。


アース・オーバーシュート・デー 投影資料より
(出展:「EARTH OVERSHOOT DAY」)


白熱するトークに熱心に耳を傾ける参加者のみなさん

奥村さんは、企業に求められることが増えているため、企業側から優先順位をつける話が出るのではと発言。「たとえば、サーキュラエコノミーは利益に直結するから先。生物多様性は、もう少しあとで、とか。ただ、サーキュラエコノミーの対策がネイチャーポジティブの対策につながっていたり、逆になっていたりすることもあるのでは」と、質問しました。

質問を受けた堤さんは、CO2削減や生物多様性を含む、すべてのサイクルがつながっていることを説明。最終的に奥村さんが「すべて、MLGsのゴールに入っている」とまとめました。


現在の課に配属になり、生物が好きになったと語る稲垣さん

稲垣さんからは、積水樹脂の事業説明に加え、竜王町にある滋賀工場と東近江市にある物流センターの生物多様性保全エリア 2 か所が、国が認定する「自然共生サイト」において認定されたこと、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)として国際データベースに登録されたことを発表。

また、滋賀県で確認されたトンボ120種のうち、55種が工場の敷地内で確認され、豊かな自然環境と工場の立地が生き物にとって非常に重要であると述べました。

さらに積水樹脂では、2016年より、滋賀県に事業所がある企業と「生物多様性びわ湖ネットワーク」を発足。トンボをテーマに、滋賀県の生物多様性保全に取り組んでいることを紹介。

稲垣さんは「トンボ100大作戦プロジェクなどのネットワークの活動を通じて、メンバーだけでなく、多くの方に参加いただき、活動を通じて生物多様性保全の輪を広げていきたいと考えています。生物多様性保全は、直接事業に結びつけることが難しいものの、自然資本を利用している以上、環境負荷の軽減や持続可能な製品開発に取り組む重要な課題だと考えています」と話し、今後も生物多様性問題に取り組んでいきたいと述べました。

ネイチャーポジティブ経営と考え方(投影資料より)

奥村さんは、過去に自身が温暖化対策を担当したことに触れ「感覚的に温室効果ガスよりも生き物を好きな人の方が多いと思う。生き物好きな人の熱量はすごい。自分が知らないだけで、身近にもきっといるはず。特に滋賀県は生き物好きが多いと思うので、ネイチャーポジティブの可能性をすごく感じています。これから、複数の問題を一気に解決するための仕組みを考えていきたい」と、決意を述べ、分科会を締め括りました。

当日の様子をより詳しくご覧になりたい方は、ぜひ配信動画をご覧ください。