みなさんこんにちは!琵琶湖環境科学研究センターの法理樹里です。
2022年7月17日(日)&18日(月:祝)の2日間にわたって繰り広げられた、ONESLASH主催の「森川里湖を感じる西浅井エコ体験『奥琵琶湖アドベンチャー夏編』」について、協力側目線より当日の様子をレポートさせていただきます。
前回のイベントの様子はこちらをご覧ください!
今回のイベントには、奥琵琶湖アドベンチャーの体験を“ひと夏の記憶と記録”として参加者さんに持ち帰っていただくことを狙って、グラフィッカーの「あるがゆう」さんにもご参加いただきました。近年、さまざまな分野で「グラフィックレコーディング(graphic recording)」が注目を集めています。グラフィックレコーディングとは、その名の通り絵(図)を用いて“場”の記録を行い、参加者さんの理解や気づきをサポートするツールのひとつです。詳細はあるがさんが共著されている書籍をご参照ください(文末に詳細を記載しています)。
初日は“野草”づくし・・・
初日の参加者は大人と子ども合わせて約40人。滋賀県長浜市西浅井町へ朝10時に集合!と息つく間もなく野草ツアーが始まりました。当日の天気が心配されましたが、雨に降られることもなくカンカン照りでもなくほどよい曇り空のフィールドワーク日和でした。
野山を駆け巡るハーブフリークなアロマセラピストの伊吹志津香さんと、山が好きすぎて森の仕事をこなしながら自然と人を繋ぐ場「里山実験室HareMori」を主催している山本綾美さんを先生にお迎えして、野草の世界を教えていただきました。ただの“草”だと思っていたもの、実は“野草”であり、様々な効能を持っていることを学びました。
楽しく野草を観察していただくことを目的に,今回このようなワークシートが作成され参加者さんに配布されました。たった数100メートルの道端に,こんなに多種な野草が生えていたなんて,本当に驚きました。大人も子どももみんな一緒になってワークシートにメモを取っておられる姿は大変印象的でした。ワークシートの左ページには、当日、あるがさんが描いてくださったグラフィックの一部を抜粋してあります。ぜひご覧ください。みなさんは何種の野草をご存じでしたか?
お昼にも“野草”を!
今回もRICE IS COMEDYが普段行っている「ゲリラ炊飯」でご飯を炊いてくださいました!羽釜で炊かれるお米の香りとその美味しさは別格です。お米をいただくその瞬間に「ありがとうございます」っという気持ちが自然と湧きあがります。そして,今回はなんと午前のフィールドワークで学んだ野草の一部が入った“野草飯”がふるまわれました。
今回ご準備いただいた野草飯には、食べられる野草7種が入っていたそうです(全種は見つけられませんでした…悔しい)。軽く茹でてアク抜き(茹でこぼし)された野草と少々の塩がご飯に混ぜ込まれていました。塩を入れることで野草の味を引き出し美味しく食べられるそうです!絶妙な塩梅でとても美味でした!お好みでお醤油を垂らしても美味しくいただけるそうです!そして、夏の野草は特にアクが強いそうなので、必ず茹でてくださいとのことでした。ただし、花はアクが少なく柔らかいので今回は生で混ぜ込んでくださったそうです。丁寧なご準備に再度感謝の気持ちでいっぱいになりました。見て・学んで・食べての三拍子そろった大満足なお昼ご飯でした!お写真:山本先生(左)、伊吹先生(右)、楽しく美味しい時間をありがとうございました!
午後は“野草”をもっとディープに学ぶ:「ハーブ王子」登場!
午後は、ハーブ王子こと野草研究家の山下智道さんに野草についてさらに詳しくレクチャーをいただきました。自宅の庭に生えているあの木も、庭の中で少し煩わしいと感じていたあの草も、それぞれ進化の歴史や、その土地で様々な植物と共存してきた経緯があり、それらが総合的にそれぞれの植物の効能をうみ出しているということを学びました。野草…奥が深いなっと改めて感心してしまいました。
蚊取り線香を作る⁈
ハーブ王子の野外レクチャーの後には、子どもも一緒に楽しめる「蚊取り線香作りのワークショップ」が行われました。蚊取り線香=お香を自作できるなんて知りませんでした…。
お香は「ダブ粉」と言われる﨓(ダブ)の木の樹皮を粉にしたものがベースになるそうです。そこに香りのある粉などを水と混ぜて形を整えてゆきます。今回は殺虫効果のある「除虫菊(和名:シロバナムシヨケギク)」のパウダーをダブ粉に混ぜて、蚊取り線香をつくりました。香りづけはお好みで「シロモジ」や「クロモジ」のパウダーを使用しました。
初日の学びを収穫!
今回見て・学んで・感じたことをその場限りの思いにとどめておくのはもったいない!今日であった様々な出来事について最後に参加者全員で振り返りました。
イベント初日の盛りだくさんなコンテンツに少しお疲れの表情も見られましたが、最後にこのようなふりかえりの場を持つことで、改めて「自然と自分のつながり」・「地域と自分のつながり」・「自分と他者とのつながり」を見つめ直す時間になったなと感じました。
夕食にもたっぷりのお野菜をいただきました!
一日の疲れを癒してくれる素晴らしいお夕飯を、新・精進料理家の蓮溪邦枝(はすたにくにえ)さんにご準備いただきました。本当に見た目が美しい料理に一同大感動でした。もちろん味も最高で、「食べるを楽しむ」を体感することができました!
2日目のレポートは、琵琶湖環境科学研究センターの佐藤さんにバトンタッチします!
佐藤さん、宜しくお願いいたします!
二日目はカヌーで水草探索ツアー!
ここからは、琵琶湖環境科学研究センターの佐藤祐一がお届けします。野草について学んだ一日目に続いて、二日目はカヌーで琵琶湖に漕ぎ出て、琵琶湖の野草、否、水草を堪能しました。
二日目の参加者も20人以上。カヌーに乗るのが初めての人も多く、ライダーハウス日本何周の乾さんから、ライフジャケットの着用方法、オールの漕ぎ方などの基本を教わります。カヌーは二人乗りで、ペアを組んで乗り込みました。
私はハーブ王子(山下さん)とペアを組んでいざ出発!風も少なく、日射もいい具合に雲に遮られて超快適。スイスイと水面を漕いでいきます。カヌーなので、残念ながら周りの参加者とはあまり話をする機会がありません。しかし私は、山下さんと水草を観察しながら楽しく進みました。
私は水草の専門家ではありませんが、水草を対象とした研究をしていたことがあるので、琵琶湖の水草ならある程度種類や特徴、変遷などが分かります。琵琶湖の水草といえば南湖が有名(大量繁茂して問題になったこともある)で、北湖の水草はあまりイメージがなかったのですが、湖岸沿いにはたくさんあるある!しかも南湖には少ない、ヒロハノエビモが多くありました。
「これクロモですよね?おぉぉ!」
「イバラモ?すげー!」
「これ、ササバモとヒロハノエビモの雑種じゃないですか?」
一つ一つの水草に感嘆し、さすがの知識で同定する山下さん。私の出る幕ないですね(笑)。
しばらく漕ぎ進めて、乾さんとっておきのスポットにご案内いただきました。そこは水草の天国。何がすごいって、種類数が多い!ヒシ、イバラモ、ヒロハノエビモ、クロモ、オオカナダモ、ヤナギモなど、10種類くらいの水草がパッチ状に広がっています。琵琶湖の水草は単一種がごっそり生えて群落を作っているイメージがあったので、このように多種が共生(?)している場所は初めて見ました。山下さんと二人で歓喜の声をあげていましたが、他の参加者には意味不明だったかもしれません。
お昼はカヌーでそのまま地元のカフェへ
昼食はカヌーで上陸し、そのまま「ときいろテラス」さんへ。今年になって、地元の福祉施設で働いておられた方々が起業してオープンされたカフェです。素敵な店内でおいしいお弁当をいただきました。
何でもありの午後、自由時間!
午後は自由時間。引き続きカヌーを漕ぐ人もいれば、浅瀬で泳ぐ人、ライダーハウスで談笑する人など、それぞれに思い思いの時間を過ごしました。山下さんは熱心に貝を拾っておられました。私は河口で投網を打っていたら子どもたちが「私もやりたい!」とたくさん寄ってきたので、急遽投網講習会を開催していました。
それにしても自由時間って!こういうツアーって通常、プログラムががっちり決まっていて、次から次に解説して回ったりするものですが、参加者がそれぞれの興味関心にしたがってのんびり過ごすこんなツアーも素晴らしいですね。
最後は地元の漁協さんの生け簀で泳いでいたビワマスを調達してきて、それを参加者のお一人が捌いてみんなで頂きました。新鮮この上ないビワマス、何度食べても美味しすぎる!
全身トロとも称されるビワマスを育むのは、琵琶湖とその流域の豊かな生態系。秋になれば産卵のために川を遡上し、砂利に卵を産んでその一生を終えます。森、里、川、湖のつながりをコンパクトに感じられる西浅井・大浦川は、それを全身で感じられる最高のフィールドだと改めて思いました。
「関係人口」をもう一回見直してゆきたい!
イベント終了後、ONESLASHの代表:清水広行さんにお話を伺いました。
Q:清水さんたちが地元でイベントを企画される目的とは?
「今回のような(イベント)体験を通じて、西浅井をもっと知ってもらいたい。これからも様々な方に西浅井へ関わってもらう機会をどんどんふやしていきたいので、色々なイベントや体験ツアーを考えています。」
今回のイベント参加者に参加後の感想をアンケート形式でお伺いしたところ、「大満足」との回答が半数以上を占め、本イベントへの参加者の「満足度」は大変高いことが示されました!さらに、今回のイベントをきっかけに、西浅井やご自身のお住いのエリアの自然にも興味を持っていただけた傾向もうかがえました。
Q:読者のみなさんへメッセージをお願いします!
「改めてもう一回…、ちょっと前から『関係人口』という言葉が出てきて、流行ったと思うのですが、この『関係人口』をもう一回見直してゆきたいと思っています。関係人口という言葉は、すでに出来上がっているとは思うのですが、なんか…もう一歩踏み込んだ関係人口を考えてゆく必要があるように感じています。」
「このような機会に西浅井を知って、西浅井でこういうイベントをしたいっと手を挙げてもらって一緒に進め行くなど。関係人口という交流の在り方を見直していく・創っていくことをしていきたいなと思っています。」
「そんなことをこういうイベントを通して実践していけると地域にとってもいい繋がりになっていくのではないかなっと思っています。なので、今後も続けていきたいと思っています!」
清水さんのお話をお伺いし、私自身もなるほどっと感じることがありました。『関係人口』の提唱者のひとりである、雑誌「ソトコト」編集長の指出一正氏によると「関係人口とは,言葉のとおり『地域に関わってくれる人口』のこと。自分のお気に入りの地域に週末ごとに通ってくれたり、頻繁に通わなくても何らかの形でその地域を応援してくれるような人たちである(指出,2017)」と言われています。そして近年、若者を中心に、こういうマインドを持っている人が増えていることも指摘されています。
今、記事を読んでおられるみなさんのお気持ちはいかがでしょうか?主催側一同、みなさんと現地でお会いできるのを楽しみにしております!
<参考文献>
有廣悠乃・あるがゆう他. 「描いて場をつくるグラフィック・レコーディング:2人から100人までの対話実践」 学芸出版社, 京都, 2021.
指出一正. 「ぼくらは地方で幸せを見つける」 ポプラ社, 東京, 2017.