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ヨシ群落を通して「エデン」に還るーコクヨ工業滋賀リエデンプロジェクト(マザーレイクニュース)

MLGs学生ライターの田中優衣(立命館守山高等学校)です。今回はMLGsの目標11「びわ湖を楽しみ愛する人を増やそう」に注目し、琵琶湖のヨシを使った文房具開発、販売に取り組む「コクヨ工業滋賀」開発チームの岡田佳美さんにお話を伺いました。(取材日:2021年9月23日)

「リエデンプロジェクト」で新たな活用法を

ヨシはイネ科の植物であり、琵琶湖周辺に数多く自生し様々な生き物のすみかや水質浄化の役割を持つ。しかし、湖岸の開発などで1953年に261ヘクタールあった滋賀県のヨシ群落は、1992年には約半分の128ヘクタールに減少してしまった。このような背景から、滋賀県は1992年に「滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例」を施行。条例の内容は、「守る」「育てる」「活用する」の3つの柱でヨシ群落の保全を行うというものだった。

「守る」「育てる」ではヨシ群落の侵入規制やフナやモロコ等の産卵と繁殖の場の確保、湖辺域の生態系の保全などの具体的な行動が取られ、2007年にはヨシ群落の面積が169ヘクタールに回復した。だが、3つ目の柱である「活用する」はなかなか進まなかった。これまでのヨシの活用法としては、よしずや簾、紙などがあった。しかし、ライフスタイルの変化や安価な外国産のヨシの流入で、活用の場を多く失い、行き場がなくなったヨシは焼いて処分されることが多くなった。

コクヨ工業滋賀はそのような問題に目をつけ、これまでのよしずや簾という活用法ではなく元来自社の強みである「紙製品」で新しい活用法を生み出した。それが、「リエデンプロジェクト」だ。

ユニークな文具で楽しくヨシを活用

リエデンプロジェクトでは、琵琶湖・淀川水系のヨシが使われた文具を開発、販売している。また、売り上げの一部はヨシ群落保全活動に役立てられている。
文具は、ユニークなものばかりだ。琵琶湖の形をした付箋や、カラフルな表紙が特徴のノートなど。また、テンプレートなどの台紙は折ってケースにできるなど捨てずにヨシ紙を楽しく使える工夫が凝らされている。

滋賀らしさを感じられるデザインが特徴の文房具たち

また、どれだけ環境に良い商品でも同じ品質なら安価な方が選ばれ、購入が進まないため価値が広まらず、結果的に環境に還元されないことから、品質とコストのバランスを考えた開発が行われている。手に取りやすい価格にするため、ノートなどはヨシの配合が少ないが、「毎日使うことでたくさんヨシを活用することにつながる」と岡田さんは語る。

ヨシ群落を通してわたしたちの「エデン」に帰る
後世に美しい琵琶湖を遺す

コクヨ工業滋賀ではこのようなヨシを使った商品開発だけでなく、実際のヨシの刈り取りボランティア活動も行われている。2009年に設立されたボランティア組織「ヨシでびわ湖を守るネットワーク」では、県内の多数の企業を巻き込んだ西の湖のヨシ刈りが10年以上に渡って行われている。

現在ヨシでびわ湖を守るネットワークには、132社が賛同している

このような「ヨシを商品に使う」「ヨシが使われた商品を買う」「枯れたヨシを刈る」のサイクルが、ヨシ群落の活性化に繋がっているのだ。また、リエデンというブランド名には、「Re=還す、帰る」「Reed=ヨシ」「Eden=楽園」と、リエデンプロジェクトを通してヨシ群落と琵琶湖を再び生き物たちの楽園にするという思いが込められている。開発に携わる岡田さんは「滋賀県には山も川も湖もあり、自然が豊かで綺麗なところ。次の世代が生きようとしたとき、汚れた状態を後に残したくない」と話す。

リエデンプロジェクトを通して、生き物たちの楽園を取り戻す。私たちの心のよりどころに帰る。後世に美しい琵琶湖を遺す。

皆さんも、1度リエデンシリーズの文房具を手に取って、「エデン」に帰ってみてはどうだろうか。

この記事は、「MLGs ライター講座」の受講生の皆様によって取材・執筆いただきました。

取材協力:コクヨ工業滋賀(https://www.kokuyo-shiga.co.jp