開催レポート

観察会「下物ビオトープの水だいたい抜く」に参加してきました。

こんにちは。

学生ライターの佐藤(立命館大学)です。

今回は、11月5日に行われた “観察会「下物おろしもビオトープの水だいたい抜く」” の様子をお伝えします。
このイベントは、草津市にある下物ビオトープの水を抜く時期にあわせて、ビオトープ内の生き物を採集して、観察するというイベントです。

下物ビオトープ
ビオトープは、ギリシャ語の生命「bio(バイオ)」と場所「topos(トポス)」を合わせた言葉で、生き物が住む場所という意味です。下物ビオトープでは、びわ湖の湿地帯を好む生き物が集まる環境をつくり、生き物の観察やハスの観察を行うことができます。(出典)下物ビオトープの看板(滋賀県琵琶湖政策課(現琵琶湖保全再生課) 作成)より

ビオトープの水をなぜ抜くのか、疑問に感じる人もいると思います。その理由は、ビオトープの水を抜いて、池の底にたまった泥を干し、余分な栄養分を減らすことで、生き物が過ごしやすい安定した水質や生息環境を保つためです。水を抜いたら、そこに住む魚はどうなるのかと思いますが、多くの魚は水位がだんだん下がっていくと、水路から近くの川や湖へと出ていくそうです(一部取り残される魚もいます)。もちろん、専門的な知識がある方が計画を立て、水を抜いていきます。

イベントには多くの応募があり、今回は、抽選で選ばれた約30名の親子が参加しました。

イベント前から盛り上がり

私がイベント会場に到着すると、イベント開始前にもかかわらず、子どもたちがビオトープのまわりに集まっています。ビオトープをよく見ると、水位が下がったビオトープの中に、魚の気配が。子どもたちはそれを見て、早く中に入りたいとわくわくした様子でした。

また、スタッフの方は、開始前でしたが、ビオトープのほとりにいたアメリカザリガニを捕まえてくれました。子供たちは、「外来種は捕まえたら(その場所に)戻したらあかんねん」「ザリガニは後ろからこうやって持つんやで」など、私に教えてくれました!

開始前のビオトープの様子

開会の挨拶と説明

イベントが始まり、運営スタッフの挨拶の後、今回のイベントの主催者である、琵琶湖博物館の金尾さんより、イベントの趣旨と注意事項について説明がありました。

注意事項の説明では、できるだけ小魚は手で触らないようにとのお話がありました。小魚は、手で触るとうろこがはがれて弱ってしまうそうです。生き物も大切な命なので、大切に接することを教えていただきました。

開会の様子

ビオトープで生き物採集

ビオトープには深いところもあるため、参加者は胴長を、子どもはライフジャケットも着用し、網を持って、いざビオトープに!

ビオトープに入っていく参加者

ビオトープの底は柔らかい泥のため、私は歩くことで精一杯でした。しかし、子どもたちは、イベント開始前からチラチラと見えていた大きな魚を早速捕まえていきます。捕まえた魚が入った網をもたせてもらうと、ずっしりとした重みが伝わってきました。

コイを捕まえた参加者

さらに、ビオトープにいる小魚や水生昆虫も探していきます。網を片手に捕まえようとしますが、素早い動きでなかなか捕まえることができません。スタッフの方が、水路を空けて、水の流れをつくってくださり、少しずつ小魚を捕まえることができました。

網に魚が入っていないか探している様子

採集の様子を見ていて、親子で協力しながら採集をしている姿が印象的でした。子どもだけでなく、大人の方々も、没頭して採集をしていました。

採集した生物を集める水槽には、どんどん捕まえられた生き物が集まってきます。私は初めて見る魚もいましたが、子どもたちは「これはな、○○やねん」「こんな特徴があるねん」と話してくれます。聞いていると、普段から生物観察をしているそうで、目をキラキラ輝かせながら、捕まえた生き物について教えてくれました。

生き物観察会

生き物採集を終え、一息ついたあとに、今回採集した生き物について、琵琶湖博物館の金尾さんより説明していただきました。

説明をする金尾さん

 

今回観察することができた生き物
ー大きな魚ー
コイ(マゴイ/中国のコイ):ヤマトゴイは中国から持ち込まれた外来種、マゴイは琵琶湖に残っていた在来の種類と言われている
フナ(ギンブナ/ニゴロブナ):ニゴロブナは鮒ずしの材料にもなるフナ
カムルチー:外来魚、雷魚とも呼ばれる

ー小さな魚ー
フナの稚魚:魚の中で一番多く採集された、この段階ではフナの種類まで特定するのは難しい
ウキゴリ:ハゼの仲間で、おなかが吸盤のようになっているのが特徴
ドジョウ:昨年はもう少しいたが、今年は2匹のみしか見つからず

ー水生昆虫ー
ヤゴ(ギンヤンマ/イトトンボ)
コマツモムシとコミズムシの仲間:見た目が似ているが、コマツモムシは背泳ぎで移動する

ーその他ー
ミシシッピアカミミガメ:北米からの外来種、事前にスタッフの方が捕獲
アメリカザリガニ:外来種、今回も多く採集された
オタマジャクシ(ウシガエル):外来種、昨年はたくさん見られたが今年は1匹のみ

今回のイベントで採集された生き物
生き物を観察している様子

今回採集できた生き物の中で特に多かったのが、フナの稚魚でした。フナは子育てをしないため、できるだけ多くの卵を産むことで、子孫を残していきます。一方で、コイの稚魚やドジョウはなかなか見つからず、今年の下物ビオトープでは繁殖や成長が上手くいっていないことが考えられました。

また、説明の中では、昨年と比較して、オタマジャクシ(うしがえる)が少ないことや、ブラックバスの稚魚がいないことが挙げられていました。毎年行われる観察会は、ビオトープにいる生物の状況を把握する調査としての役割も果たしています。昨年との変化の背景には何があるのか、生物を通じて琵琶湖について考えをめぐらすことができました。

イベントを終えて

イベント終了後、イベントに参加していたご家族にお話をお伺いしました。普段から、川の清掃活動や生物調査の活動に参加していて、今回のイベントを知って、貴重な機会なのでぜひ参加したいと思ったそうです。子どもたちは、テレビや琵琶湖博物館で知識を得て、地域の川で清掃活動や調査活動を行っているそうです。今回、色々な生物を採集し、金尾さんの説明を聞くことができ、楽しく学ぶことができたと話していました。また、親御さんも、子どもたちと一緒に活動するのが楽しいと話されているのが印象的でした。

取材後記

今回、私はライター活動で初めて、生き物と触れ合う機会となりました。先日開催された「みんなのBIWAKO会議/COP1」や、MLGsの評価報告書「シン・びわ湖なう2022」の中でも、Goal3「多様な生き物を守ろう」は、危機的状況にあることが示されていました。今回、そのゴールにつながる活動に、実際に参加して、琵琶湖の生き物について、前より身近に考えることができました。非常に多く採集された外来種や、色々な生態をもつ在来種に触れ、さらに琵琶湖の生態系について学び、良い環境とは何かについて考えていきたいと思いました。また、今回参加して、子どもたちが本当に生き物に詳しく、自主的に様々な活動をしていて、驚かされました。自然に触れることで、次世代にもその価値や暮らしをつないでいくことができるのだと実感しました。

興味深そうにミシシッピアカミミガメを覗き込む子どもたい

取材にご協力くださった皆様ありがとうございました。