9月6日(金)に開催された「MLGsみんなのBIWAKO会議 / COP3」で行われた、第2分科会の様子をお届けします!
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第2分科会のテーマは、「企業・事業者が取り組むプラごみ削減」。
ゲスト登壇者は、株式会社ダイフク ビジネスイノベーション本部 髙木皓平さん、株式会社ミタカグループホールディングス代表取締役 三峰教代 さん、バイオエックス株式会社代表取締役 吉田浩一さんの3名です。
司会・進行は、琵琶湖環境科学研究センター専門研究員 佐藤祐一さん、しがローカルSDGs研究会事務局長 辻博子さんの2人が務められました。
プラごみ削減のため、私たちにできること
まずは、ゲスト3名の自己紹介からスタート。続いて、司会の佐藤さんから、日本のプラスチック生産量の増減を示すグラフが提示されます。多少増減はあるものの、現在の生産量は、1年間に約1,000万t。
「そのうち900万tは、廃プラスチックとして一般家庭と企業からおよそ半分ずつ排出されています。900万tのうち、有効利用されているのは、約86%。ただ、その多くは熱エネルギー、つまり焼却されています」と、説明がありました。
続いて、サーキュラエコノミーについて、資源の投入量や消費量を抑えつつ、あるものを活用しながら付加価値を生み出す経済活動と用語を解説。
また、2022年4月、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律が施行されたことや、プラスチックの製造工程や利用、廃棄において、環境や人体に与える影響などにも触れ、「事業者の方がプラごみ削減に取り組むきっかけや課題を知り、活動拡大に向けて私たちに何ができるのかということを議論していきたい」と趣旨説明が行われました。
ゲストが語る、プラごみと事業との関わりについて
企業の力を生かし、河川ごみ回収のお手伝いがしたいと語る髙木さん
まず髙木さんは、株式会社ダイフクについて「マテリアルハンドリングシステムの総合メーカー」と紹介。2024年に環境保全や地域貢献活動の一環として、近江八幡市の地元ボランティア団体「北之庄沢を守る会」と連携し、プラスチックごみの実態調査と回収を実施していることを語ります。
ダイフクは、物を運ぶ技術を生かし、メーカーや消費者に物を運ぶ、いわば産業の動脈です。しかし、現在の社会では、サーキュラエコノミーやリサイクルのサイクルからこぼれおち、河川に流出しているものも。
「産業の静脈として、あるべき場所に戻すお手伝いができればと、まずはプラスチックごみの回収調査の取り組みを始めました。ごみのデータを可視化や、将来的にはごみの回収の自動化などを目指した開発を行い、地元での取り組みを続けていきたいと考えています」とまとめられました。
事業者としてリサイクルの情報発信にも力を入れたいと話す三峰さん
続いて、株式会社ミタカグループホールディングス三峰さんは、産業廃棄物・一般廃棄物の処理業者としてごみのプロの立場から、環境に対する取り組みを紹介。日本で発生する廃プラのうち、13〜14%が埋め立て、焼却されていることに触れ、「単純焼却や埋め立てのプラスチックを減らしたい、ゼロにしていきたいとの思いから、昨年より製鉄所で使用される副資材にリサイクルする事業を始めました。」と話します。
会場では、製鋼副資材「エコマイト」の実物に触れることができ、多くの方が興味深く眺めていました。
さらに、ミタカグループでは、リサイクルを「自分ゴト」にして欲しいと、家庭から出るシンプルなプラスチックごみを使った「マテリアルリサイクル」のワークショップを実施しています。使用する器具は、滋賀県立大学との共同研究により作成。
「ワークショップは、子どもを中心に人気です。機会がありましたら、ぜひワークショップや弊社の工場見学にご参加ください。SNSでは、リサイクルに関する取り組みも見ていただけます」と締め括られました。
続いて、バイオエックス株式会社吉田さんは「これ以上ごみを出さない。ごみにならないものをつくる」との立ち位置からサトウキビの搾りかすやトウモロコシの非可食部分を使用したPLA樹脂のコップを紹介。
でんぷんを乳酸発酵した樹脂は、植物由来のため、誤って口に入れても害がなく、安心・安全です。使い終わって燃やした際には、水と二酸化炭素が発生しますが、サトウキビが生育する段階で二酸化炭素を吸収するため、カーボンニュートラルであることにも言及。
耐候性、耐油性、耐薬品性があり、一定の評価を受けていたものの、課題は耐熱性。55℃で変形することを理由に、普及は困難でした。しかし、開発を重ね、結晶化技術(特許出願中)により、耐熱性を加えた製品が実現。電子レンジも使用できます。
吉田さんは「国際プラスチック条約(The Global Plastics Treaty)」締結にも触れ、「これは、つくる段階から、廃棄方法の明記を考えようという話です。そして我々は、今後石油由来のプラスチックが使えなくなる日が必ず来ると考えています。じゃあ、どうするのか。だから、植物由来です」と語り、滋賀県発、世界に向けた情報発信を誓いました。
最後に辻さんからは、しがローカルSDGs研究会の成り立ちについて説明。東日本大震災の被災地と繋がる活動から始まり、再生可能エネルギーや気候危機、SDGsなどをテーマに活動し、2021年に現在の名称に。
現在の活動について「小学生のプラごみ研究会『Rキッズ』は、今年で3年目。2023年からは、びわ湖のマイクロプラスチック調査を行い、本日司会の佐藤さんにもご協力をいただいています」と話します。
【プラごみ調査隊】彦根会場ワークショップレポート
また、コロナ禍でテイクアウトが増え、プラスチック容器の包装ごみが増加したことから、地域共通のリユース容器「リパコ」の普及を目指して、2023年2月・3月に3店舗で実証実験を行い、2024年10〜12月には参加を9店舗に拡大して社会実験を行うことについて紹介されました。
参加店のテイクアウトメニューをリパコで持ち帰ることでプラスチックごみ削減を目指す(写真:辻さんご提供)
事業者同士のつながりが、新たな可能性を生む
まずは、辻さんからゲスト3人に対し、プラごみ削減に取り組み始めたきっかけについて質問が行われます。
髙木さんは「ESG (Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス(企業統治))の取り組みの一環として、率先して、対策や解決策を見出す必要があります。社会課題解決のために河川ごみの回収を始めました」と回答。三峰さんは、「滋賀県運営の埋め立て場閉鎖の話が出たタイミングで、埋め立てごみを減らし、リサイクルに力を入れたいと考えました。技術を探すなかで出会ったのが、エコマイトです」と説明。
吉田さんは、銀行員や保険会社などを経て、商社を立ち上げる中で、海外での環境に関する考え方に感銘を受け、環境改善や水質改善に触れる仕事をしたいと思ったことがきっかけだと語りました。
続いて、三峰さんは、SDGsの加速により、コストをかけてでもリサイクルすべきといった事業者側の意識の変化と同時に、コストダウンの難しさについても言及。「リサイクルの手前の選別作業に、コストがかかります。商品の設計段階から、リサイクルを考えて作る。捨てる方も、リサイクルしやすいように、ひと工夫してもらえればありがたいです」と伝えるとともに、自社でのリサイクルプロセスの情報発信に力を入れていきたいと語りました。
参加者の発言を機に、レジ袋の有料化やプラスチックカトラリーの配布規制が広まる一方、サッカー台などで、必要以上に小さなビニール袋をもらう人がいるとの話に。辻さんは、消費者の意識変化が必要と語り、会場の「NPO環境市民」の堀さんに話を投げかけます。
突然の指名に笑いつつも、堀さんは「全国100数十件のスーパーにて、プラ袋の適量利用の呼びかけについて調べたところ、表示のあった店舗は、約0.5%。野菜売り場での表示はゼロでした。そこで今年の5月に、辻さんと一緒に滋賀県琵琶湖環境部に行き、適量利用の掲示について相談をしてきました」と現状の取り組みについて説明。
さらに、髙木さんから三峰さんには「今後、河川回収したごみをリサイクルする流れをつくるために、事業者さんに渡す方法について聞きたい」と質問。
また、辻さんは、電子レンジや食洗機を使用する現代の生活様式に考慮し、リパコの現在のお弁当箱が50%バイオマスのプラスチックであることを話したうえで、吉田さんに100%植物樹脂のお弁当箱制作が可能かどうかを相談。今回の分科会を通じて、事業者同士の交流のきっかけが生まれました。
ちょっとつながることで、さらに良いものが生まれる
「一個人としても事業者さんの活動を身近に感じられた」と佐藤さん
1社で取り組みを進めると、どこかの段階で、限界が訪れます。髙木さんは地域との連携の課題、三峰さんは、製品をつくる人やごみを出す人が分別に配慮してくれれば、もっとリサイクル率が高くなるといった課題。辻さんのリパコも、今回、吉田さんとの出会いにより、もしかするとさらに魅力的なリユース容器ができる可能性があります。
佐藤さんは、「ちょっとつながることで、もっともっといいものができる。これが、今日、僕がみなさんの話を聞いて、特に感じたことです」と、分科会の内容をまとめました。
当日の様子をより詳しくご覧になりたい方は、ぜひ配信動画をご覧ください。