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【プラごみ調査隊】彦根会場ワークショップレポート

2024年9月7日(土)、彦根市の湖岸にて「プラごみ調査隊」が開催されました。「プラごみ調査隊」は湖岸の砂浜におけるマイクロプラスチックの状況について調査し、プラスチックごみ問題の現状について楽しく学ぶことを目的としたイベントです。

参加者は、保護者の方々と約20名の子どもたち。しがローカルSDGs研究会事務局の辻博子さん、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター専門研究員の佐藤祐一さん、横山大稀さん、滋賀県立大学工学部材料化学科有機複合材料研究室の「廃棄物バスターズ」5名の学生さんによる司会進行と説明、サポートが行われました。

当日のイベントの様子について紹介します。

湖岸でマイクロプラスチック調査!

集合場所で開会の挨拶と説明が行われ、歩いて湖岸に移動。本イベントは日本財団 「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」の一環で開催されています。参加者全員が集まり、海ごみゼロポーズの記念撮影を行いました。

早速、5班に分かれ、各班リーダーの指示に従いながらマイクロプラスチック探しがスタートします。


各班のリーダーを務めたのは「廃棄物バスターズ」のメンバー

マイクロプラスチックは5㎜未満のプラスチックの総称です。今回は現地の砂を5㎜の網目サイズのふるい(ふるい粗目)に通過させて、5mmよりも小さいマイクロプラスチックをたらいの水上に浮かべました。さらに、たらいの上澄みの水を2mmの網目サイズのふるい(ふるい細目)に注ぎ、2mm以上のマイクロプラスチックを回収しました。

湖岸での調査手順は、次のとおりです。

【調査手順】
1. たらいに水を汲む
2. 「ふるい粗目」を逆さにして砂に埋め込む
3. 埋め込んだ「ふるい粗目」の底にフタをするように「チリトリ」を差し込む
4. 「チリトリ」と「ふるい粗目」を両手で押さえながら砂から引き上げる
5. たらいの上で「ふるい粗目」で砂をふるう
6. 「ふるい粗目」に残った石などの中から、プラスチックを見つけたら 回収する(これはマイクロプラスチックよりも大きいメソプラスチック)
7. たらいの底に沈んでいる砂をゆっくりかき混ぜ、砂に埋もれているマイクロプラスチックを浮かせる
8. たらいの水を少しずつ注いで、マイクロプラスチックを「ふるい細目」で受ける。



「プラスチックの見つけ方がわかった!自然界にない色は、プラスチック!」「これはプラスチック?虫のたまご?」など、発見や疑問の声が続々。

子どもたちがマイクロプラスチック探しに励むなか、保護者のみなさんは、湖岸のゴミ拾いを担当されていました。

見つけたプラごみを詳しく調べよう!プラごみ学習会スタート!


滋賀県琵琶湖環境科学研究センター専門研究員・佐藤祐一さんによる解説

滋賀県立大学交流センターに移動し、学習会が始まります。最初に佐藤さんがプラスチックのサイズと名前を説明。サイズによって、マクロ(≧25mm)・メソ(<25mm, ≧5mm)・マイクロ(<5mm, ≧1µm)・ナノ(<1µm)の4種類に分けることができ、今回は、マイクロプラスチックとメソプラスチックを分けてほしいと子どもたちに伝えます。


みんなでマイクロプラスチックを探し中


顕微鏡で見ることで、新たな発見も多い

見た目で判断が難しいものは、佐藤さんが顕微鏡で調べてくれました。マイクロプラスチック、メソプラスチックともに「人工芝」「被覆肥料」など正体がわかるものもあれば、破片からは判断できないものもありました。


見つけたプラスチックは、大きさ別に分けていきます


調査結果を用紙にまとめます

ふるいですくった回数とマイクロプラスチック、メソプラスチックの数、特徴を記入していきます。

各班、プラごみ調査結果を発表

1班から順番に前に出て調査結果を発表しました。


1班


2班


3班


4班


5班


佐藤さんは、今回多くの班が見つけた黄色いカケラ、「被覆肥料」について解説しました。これは、肥料成分をプラスチックでコーティングしたものです。


顕微鏡で拡大された「被覆肥料」の殻

肥料には窒素やリンが含まれており、琵琶湖に大量に流れるとプランクトンがたくさん発生し赤潮の原因になることに触れました。そして被覆肥料は、長期的にゆっくりと栄養素を農地に放出し、肥料を撒く量や回数を減らせるため 、琵琶湖の環境のことや農家さんの負担を減らすことを考えて生まれたものだと話します。


佐藤さんの話を熱心に聞く子どもたち

今回の彦根会場では、あまり見当たらなかったものの、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維で作られている服のホコリからも、マイクロプラスチックが出ていると説明。そのマイクロプラスチックは、川から琵琶湖へと流れている可能性があります。

佐藤さんは「ゴミをポイ捨てする子は、ここにはいません。でも、お米を食べて、服を着て、運動をしていますよね。そんな日常の暮らしの中で、無意識にマイクロプラスチックを生み出しているんです。だからこそ、自分には関係のない話だとは思わないでください」と、メッセージを伝えました。


続いて、横山さんから今回の彦根会場に加えて、近江八幡会場、大津会場で開催した調査の 結果が紹介されました。

会場 マイクロプラスチックの平均密度
(個/ふるい1杯の面積)
近江八幡 2.12
大津 5.71
彦根 1.89

※ふるい一杯:227㎠

また、今回の調査範囲を100m、浜からの距離を4mとした場合、今回の調査面積は400平方メートルです。使ったふるいの大きさで例えると、約1万7,500個分。計算式は、1万7,500×1.89=約33,000個 です。つまり、今回の彦根の調査範囲だけでも、約33,000個のマイクロプラスチックがあると予想されました。


今回の調査結果

佐藤さんは、子どもたちに、プラスチックゴミを出さないためにはどうすればいいかを質問したうえで「今日の経験を友達に話したり、家でもう一度やってみたり、来年の自由研究の課題にしたりしてくれたら嬉しいです」と伝え、勉強会は幕を閉じました。

調査・体験を通して、プラごみ問題を「自分ごと」に


しがローカルSDGs研究会 事務局の辻さん

世界的な問題である、プラスチックごみ。これまでにも、プラスチックごみを減らすための学習会やワークショップを多数開催してきた辻さんですが、さらにごみの行方や、それが自然界にもたらす影響について体感できる場をつくりたくて企画したと語ります。

「今回は、実際に調査して体験・体感してもらえたと思います。私は、今回3会場全てに参加しました。掃除が行き届いていて、ごみの見当たらない大津会場、美しい真っ白な砂浜の近江八幡会場、ごみの多い彦根会場のうち、最もマイクロプラスチックが多かったのは大津会場でした。予想以上に多くのマイクロプラスチックが見つかったことも、ごみの量からマイクロプラスチックの数が予測できるわけでは無いという事実も、大きな学びとなりました。参加された皆様も、記事をご覧になった方々も、改めて、プラスチックごみと自分たちの暮らしとのつながりを考えてみるきっかけにしていただけたら嬉しいです」