MLGsニュース

観光体験で地域を元気に-東近江市観光協会-

こんにちは。MLGs WEB学生ライターの窪園真那(立命館大学)です。

今回は、一般社団法人東近江市観光協会の清水元さんにお話を伺いました。

(2022年8月25日)

観光体験×SDGs

滋賀県の北東部に位置する東近江市の有名な観光地の一つに、近江商人のふる里「東近江市五個荘」がある。近江商人の代名詞とも言える「三方よし(:売り手よし、買い手よし、世間よし)」は、売り手、買い手が満足した取引を行い、その取引で得た利益は広く公共のため活用されなければならないという近江商人の精神を表した言葉である。現在では近江商人=三方よしという言葉で知られているが、実際には三方よしの精神につながるそれぞれの家訓が各家庭に存在する。

近江商人の家訓を通して、彼らの生き様を知ることができる観光体験を提案している清水元さん。この観光体験では、座学及び近江商人屋敷で五個荘の乾徳寺の中野住職から学ぶことができる。「滋賀って、掘っていくと面白い文化がどんどん出てくるんだよ」と清水さんは話す。一つの拠点で体験しながらじっくりと学ぶツーリズムが社会の流れ。大手旅行会社のパッケージツアーも、これまでの観光地を大型バスで転々とまわる形から変化してきた。さらに観光客に対して、地域の魅力を発信するためには、地域の人々が自分達のまちの文化や歴史、自然などを学びなおすことが必要だ。そうすることで、観光を通して、観光客だけでなく、その地域の人々も地域の魅力を再発見し、次世代に継承することができる。次世代まで地域の資源を残していくことができる点で、東近江市の観光は持続可能な地域の実現に貢献するものだといえる。観光を通して、地元の人も観光客も双方にとって持続可能な地域実現のためのヒントを多く得られるだろう。

民泊×MLGs

滋賀県では甲賀市、日野町、そして東近江市の広域連携で民泊を盛んに受け入れている。清水さんは、民泊とMLGs(マザーレイクゴールズ)を組み合わせることで、地域色をより出した環境学習が実現できると考えている。

そして今、東近江市では、これまで行ってきた民泊を通した学びに学生のSDGsの探究学習を組み合わせられないかと検討している。民泊を受け入れる家庭の方々との暮らしの中で、まずは持続可能な暮らしやMLGsの取り組みを感じてもらう。その後、学校で事後発表をすることで、学生目線の評価をする。さらに、学生の評価やアイデアを洗練化することにより、地域の課題解決につなげようという取り組みだ。

しかし、この民泊の実現に向けては課題もあるという。民泊の受け入れ家庭がMLGsについて事前に学び、学生に対応することは非常に難しい。そのため、学生の事前学習を充実させることや生徒が自ら学び、答えを探す姿勢を重視したアクティブラーニングを積極的に行うことが解決のカギになりそうだと清水さんは考えている。

また、新型コロナウイルスが蔓延したことにより、観光客が減っただけでなく、民泊の受け入れ家庭の方々も感染の不安から、受け入れを制限する傾向にあることも課題である。新型コロナウイルスの影響に限らず、高齢化や新規受け入れ家庭が増えないことから、民泊受け入れ家庭の減少も懸念されている。そこで、東近江市では民泊の定義を改めて考え直す動きが見られている。「宿泊抜きでは考えられないって考え方もあるけれど、やはり交流することが何より大切だと思う。コロナのせいで宿泊ができなくなっても、民泊家庭の方とZoomで料理教室とかできることはやっていきたい。その交流を通して、大切な食文化やSDGsを学ぶ機会になる」と清水さんは民泊の醍醐味だった人との交流について熱く語る。

民泊家庭や地域の方々との交流の中で、地域外から来た人が学び、発信し、最終的には地域の課題解決につながる。このサイクルを実現できる観光を清水さんは提案していく。そして、持続可能なまちの実現に向けて日々奔走している。

 

編集後記

最近、観光のあり方が変容しています。ただ現地に行くだけではなく、行った場所での学びに時間とお金を費やす人が多くなってきているようです。全国的に過疎地域の存続が問題視される中、持続可能な社会の実現は過疎化が進む地域にとって最重要課題です。地域の人だけでなく、地域の外の人々も参加して、その地域の魅力や知恵を再発見する機会創出のためには、観光は非常に重要で、活用していくべきものです。

清水さんをはじめ、東近江市観光協会の皆さん、ご協力ありがとうございました。