MLGsニュース

-県内事業者から学ぶ- MLGsを観光ビジネスで活かすには?

皆様こんにちは 学生ライターの浅田竣介です。

今回はマザーレイクゴールズ推進委員会事務局(令和5年度受託事業者:近畿日本ツーリスト株式会社滋賀支店)によって開催された、オンラインセミナーについてレポートします。

このセミナーは、MLGsを観光ビジネスとして展開されている県内企業(琵琶湖ホテル/BSCウォータースポーツセンター)より、MLGsに関するお話をお伺いし、「MLGs」を活かすことでビジネスチャンスに繋がる可能性を模索する機会として開催されました。

ゲスト紹介:琵琶湖ホテル(副総支配人 黒田氏/営業企画部部長 菊池氏)

琵琶湖ホテル様はSDGs、MLGsの達成の貢献に大きく分けて、「環境へのプラスの効果を増やす取り組み」と「環境へのマイナスの影響を減らす取り組み」の両面が必要ということで取り組まれておられます。

1.環境へのマイナスの影響を減らす
2022年4月1日より、これまで客室の使い捨てアメニティの設置を廃止したそうです。脱プラの観点からはもちろんのこと、使い捨てを無くすという観点からお客様が普段から使われているアメニティを持参いただく「ライフスタイル型」の滞在を提案しておられます。
2.環境へのプラスの効果を増やす
「里山」をテーマにした活動を約20年以上にわたって実施されています。
里山を始めとした美しい風景を守り、人と自然との共生の象徴とも言われながら、暮らしの変化とともに危機的状況であるとされる里山を未来へ引き継ぐために「里山の食彩プロジェクト」と「山野草プロジェクト」に取り組んでおられます。

●里山の食彩プロジェクトについて・・
里山の食彩プロジェクトの合言葉は、「食べることが、守ること」だそうで、里山の恵みを食べることで、里山保全に貢献できる仕組みを構築されています。


副総支配人 黒田氏/営業企画部部長 菊池氏

地の食材を楽しむことで地域に貢献できていると思うと、なんだか誇らしげな気分になりました。

●山野草プロジェクトについて・・
ホテルの敷地内に「小さな里山」と呼ばれるスペースがあり、里山の四季の美しさや自然を楽しむ文化をお客様に身近に楽しんでいただき、里山に関心を持っていただきたいという意図があるそうです。その他、“棚田”のあぜに咲く山野草をモチーフにした花壇や畑があり、館内にお花を飾ったり、地元の保育園児やこども食堂との「食育活動」も展開されています。

ゲスト紹介:BSCウォータースポーツセンター(専務取締役 井上氏)

主に小中学生向けのキャンプや校外学習で、琵琶湖でのカヤック体験やヨット体験などの琵琶湖自然体験を行っておられます。その他、「ミライ、キフ」という大学のゼミや研究などへの寄付活動に取り組んでいます。琵琶湖を学び、体験した中高生に、どの取り組みに支援したいかを投票してもらい、BSCウォータースポーツセンターが寄付をしてその取り組みを支援する仕組みです。
※参考:ミライ、キフ支援先(https://bsc-int.co.jp/miraikifu)


BSCウォータースポーツセンター(専務取締役 井上氏)

インタビュー形式で、質問スタート!
① MLGsに関する取り組みを始められたきっかけや思い教えてください

【琵琶湖ホテル様の回答】
きっかけは20年以上前に遡ります。企業による自然環境への意識が高まる中でホテルとして何ができるかを考えました。
お客様にも前向きに取り組んでいただける事を考えた結果、里山をテーマにする活動が始まりました。里山のお米など様々な食材を召し上がっていただく事で食材が生まれ、里山を守ることができます。ボランティアではなく本業のなかでしっかりプロジェクトを続けていくことが大切だと考えます。
2003年からは地酒造りや、里山をめぐるツアー、棚田米を使った鮒鮨作りなどを行い、
琵琶湖のほとりにあり続けるホテルとして、この琵琶湖を美しく未来に引き継いでいくために何ができるか、長年にわたり取り組んできました。

【BSCウォータースポーツセンター様の回答】
きっかけというよりも、琵琶湖や浜辺がきれいである環境は、事業に一番必要なことです。県内外の方々に琵琶湖は綺麗だった、楽しかったという思い出を心に残していただき、琵琶湖を身近に感じてほしいという想いです。今後は琵琶湖が汚れてきたら、琵琶湖を身近に感じてくれる子供たちが気にかけてくれる、そのような関係人口を増やしてくのが目標です。

②MLGsな取り組みに対してお客様や従業員の反応は?

【琵琶湖ホテル様の回答】
最初のプラスチックアメニティを取りやめて、有償に切り替えた際は、お客様からの直接的なご意見と口コミをいただきました。最初は従業員も説明に苦労していましたが、いまでは自信を持って説明できるようになり、口コミでも好感を持っていいただくような感想が増えました。長い年月をかけて説明を重ねることが重要です。
里山での取り組みでは、昨年7月より毎月11日に「いただきますの日」を設け、畑で採れた野菜やお米を一品無料で提供しています。意味をご説明してお客様に提供することでお客様に喜んでいただき、従業員の意識も高まっていると感じています。

【BSCウォータースポーツセンター様の回答】
「ミライ、キフ」という大学のゼミや研究などへの寄付活動に取り組んでおり、帰りのバス乗車前に学生が真剣に投票してくれます。実際に琵琶湖でカヤックをしたら考えが変わったという子がいたり、議論をする子達がいたり、その真剣さに衝撃を受けました。この活動を開始してから1年以上が経ちましたが、以前よりもSDGsの話が伝わるようになってきたと感じています。

一部の利益を寄付することになるため従業員への説明も行いましたが、ネガティブな反応はありませんでした。むしろ事業として一つの強みになっています。
○滋賀県が実施する「滋賀応援寄付について」
滋賀県の教育や環境などは子供たちにとって無関係であるにも拘らず、投票してくれて嬉しいです。投票先に大きな偏りがないというのも驚きです。

③今後の展望について

【琵琶湖ホテル様の回答】
プラスチックごみの削減と使い慣れたものをお持ちいただく新しい旅行スタイルをご提案しています。滋賀県知事に、取り組みの説明をしてもらう動画を作成しました。滋賀県全体で環境保全活動をしているというPRをしていくことで、活動の輪を広げたいです。
琵琶湖ホテルの取り組みについて講話やセミナーをして欲しいと問い合わせもあるため、食事をセットに勉強会やセミナーとしてパッケージ化したものを売り出していきたいです。

【BSCウォータースポーツセンター様の回答】
子供たちだけでなく、親世代も巻き込んで琵琶湖と触れ合っていただくことで琵琶湖に親しみを持つ人口を増やしたいです。
今までやったことのないイベントを企画して、事業の売上に繋げていきたいです。

最後に一言

【琵琶湖ホテル様の回答】
滋賀県は環境先進県としてMLGsを率先してやっているので、県から全国へ、全国から世界へ、できることから発信していきたいです。

【BSCウォータースポーツセンター様の回答】
何かひとつ取り組みを行うことで、お客様から選ばれる理由になると思います。「ミライ、キフ」をやっているから中学校が遠足に来てくれる、など選ばれる理由の一つとして活動を続けていきたいと思っています。

今回のセミナーを通じて

今回インタビュイーとしてご出演されたお三方自身が、お客様との接客や繋がりを通じて、MLGsに関する取り組みへの周囲の理解の高まりを肌で感じておられるようでした。
新しい取り組みを導入するにあたり、周囲(お客様)の理解を得ることに苦労するというお話もありましたが、丁寧に説明を重ねることで徐々に浸透していくことが学べ、大変勉強になりました。また、琵琶湖や周辺環境を大切に想う姿が印象的で、施設へ訪れたくなりました。

旅行の際、ホテルやレストランでユニークなMLGsに関する取り組みをしている施設があるかもしれません。ぜひその際は、取り組みの背景を調べてみてはいかがでしょうか?