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MLGsの理念を地域で実現する「北の近江マザーレイク共創会議」代表・三和伸彦さんにインタビュー

2025年4月、滋賀県長浜市(旧西浅井町)に新たな一般社団法人が誕生しました。その名も「北の近江マザーレイク共創会議」。代表理事を務めるのは、長年にわたり滋賀県庁で環境政策や琵琶湖保全に携わってきた三和伸彦(みわ・のぶひこ)さんです。
今回は、三和さんが描く北の近江から発信する循環の再生モデルやMLGsの理念を地域で実現する「北の近江マザーレイク共創会議」について、お話しを伺いました。

三和伸彦さん

きっかけは「ヤンマー永原工場」閉鎖後の地域課題

滋賀県北部地域の中心にあったヤンマー永原工場は、昭和24年に操業を開始し、長く地域経済を支えてきました。地元の多くの人たちがこの工場で働き、兼業農家として田畑を守ってきました。
しかし2015年に工場が閉鎖されると、これまで工場があることで続いてきた「兼業農家モデル」が揺らぎ始めます。過疎と担い手不足が進み、田んぼの維持はますます難しくなると同時に、地域の経済が循環しなくなるという課題が深刻になりました。

その中で、地元若者グループ「ONE SLASH」が工場跡地の活用を提案。ヤンマー本社も「地域の思いを応援する」姿勢を示し、行政・企業・市民が連携する形で、共創会議の構想が生まれました。

三和さんは、定年退職を機に「行政で培った経験を地域の現場で生かしたい」と決意。琵琶湖版SDGsであるのMLGs(Mother Lake Goals)を滋賀県北部地域で具現化しようと、新たに立ち上げられた「一般社団法人 北の近江マザーレイク共創会議」の代表理事となりました。

西浅井の田んぼに囲まれた長浜市役所西浅井分庁舎に事務室を構える

「水際文明」琵琶湖の文化・自然に学ぶ新しい価値観

共創会議のキーワードは「水際文明」。
これは、琵琶湖のほとりで培われてきた「自然と共に生きる知恵」「水の恵みに感謝する文化」を、現代社会に再生させようという思想です。水・自然・人・暮らし・地域産業がつながりながら持続可能な未来を創る文明的な営みを「水際文明」と名付けました。

「水際は、陸と水、人と自然、暮らしと産業が交わる場所。そこで生まれる関係性こそが、持続可能な社会のヒントになると思います」と話す三和さん。

北の近江マザーレイク共創会議の取り組み

11月1日に「ONE SLASH」の清水広行さん(MLGsふるさと活性化大使)や滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの佐藤祐一さん(MLGs案内人代表)らが西浅井の大浦川で開催した「小さな自然再生現地見学会~大浦川に設置されたビワマス魚道の効果を体感しよう!」に協力。ビワマスが川を遡上できるように設置した魚道を見学しました。


今後は、「水際」を意識しながら、西浅井の自然やヤンマー永原工場を活用した企業・大学向けのフィールドワークのプログラムや、環境に配慮した奥びわ湖のクルーズなど、地域の資源を活用した持続可能な社会の実現に向けた取組を一つずつ実現させていきたいとのことです。

社団の事務室から琵琶湖方面を望む

地域と企業、行政をつなぐ「ハブ」として

湖北(長浜・米原)と湖西(高島)、さらには日本海(敦賀)という三つの生活圏をつなぐ位置にある西浅井を「情報と交流の交差点」として再構築したいと話します。

「この場所は、もともと敦賀と関西を結ぶ人と物の通り道でした。古来、琵琶湖は重要な交通路であり、港は多くの船が行き来していたのです。私は西浅井を再び人と人が出会い、学び、そして動き出す場所にしたいと思っています。」

MLGsの地域実現のモデルに

法人としての共創会議は、まだスタートから半年余り。「北の近江からMLGsを世界へ発信する」ことは法人の一つのテーマです。

三和さんは「水際で脈々と暮らしをつないできた西浅井のような小さな地域の中にこそ、持続可能社会に必要な普遍的な価値がある。ここでの成功は、必ず世界中の地域に応用できるモデルになるはず」と期待します。

一般社団法人 北の近江マザーレイク共創会議 概要

設立:2025年4月18日
所在地:滋賀県長浜市西浅井町大浦2590番地(長浜市役所西浅井分庁舎3階)
代表理事:三和伸彦
活動領域:地域資源循環、教育・研修事業、観光・発酵文化の振興、MLGs実践推進

ホームページ
https://kitanoomi.org/