こんにちは。MLGs案内人幹事の村上悟です。
2022年11月から2023年1月にかけ、日野町立南比都佐小の5年生のみなさんが、総合学習の一環として「SDGsを自分ごと化するMLGs体験学習〜森林活用編〜」に取り組まれました。
身近な場所で、自分にできることを学べる体験学習を
担任の松村直子先生は、前任校でSDGsに関する学習を実践された経験がありました。今年度、MLGsに関する学習を実施したいと相談をいただき、年度当初から検討をしてきました。
先生との対話を通じて、“地球や琵琶湖の課題を知るだけで終わらず、子どもたちが身近な地域の中で、自分にできることがあることに気づけるような学習、そして何らかの行動につながるような学習を目指すことにしました。
そして、相談の結果、学校からほど近い距離にある学校林を活用することになりました。もともと里山として活用されていた雑木林で、今も保護者や地域の方々によって整備されている森です。
カードゲームで、自分も世界も大切にする疑似体験
初回の11月18日は、教室で、風かおるさん(ガイアコミュニティ・2030SDGsカードゲームファシリテーター)のナビゲートによるSDGsカードゲームを体験しました。
子どもたちは事前に、SDGsのゴールについて学び、世界でどのような問題が起きているか、そしてその解決のために何ができるかを考えていました。
このゲームは、一人ひとりが自分の目標を達成することを目指すと同時に、環境的に持続可能で公正な社会と、経済のバランスをどのようにしてゆくのかを考え、他のプレイヤーと交流しながら、プロジェクトを実施していく、というカードゲームです。
自分のことだけを考えていては社会の問題は解決できず、他の人とコミュニケーションをして情報を共有し、それぞれの資源(お金や時間など)を交換しあうことが必要であることを、子どもたちは遊びながら学びました。
学校林で、「資源」として木や竹を集めてみる
二回目の12月16日。いよいよ、山本綾美さん(森づくりコーディネーター)の案内で、小学校の学校林を訪問しました。途中で、遠くに見える森を見て「人工林」と「天然林」の違いを学びました。また、途中にあった整備をされていない人工林(杉林)に入り、じめじめして暗い感じも体験しました。
学校林は、手入れされていて気持ちよい森です。人工林との違いを実感したうえで、なぜ人が木を使わなくなったのか、もともと木は何に使われてきたのか、などを話し合いました。そして、森の木々は、暮らしに活かせる「資源」であることを知りました。
そして実際に、木や竹を資源として活用するために、落ちている枝を拾ったり、竹を切ったりして、学校まで持ち帰りました。帰りの道中、子どもたちは、手に持った木や竹を「資源」と呼び合っていました。
木や竹を使ってみる、実物に触れる
最終回は、年をまたいだ1月13日。学校の畑で活動しました。前回に拾った木で焚き火を起こす班、前回に持ち帰った竹を割って竹串をつくる班、そして、木の板を作る体験をする班の3つに分かれて、体験作業をしました。
最初はたどたどしかった子たちも、山本さんのアドバイスを聞いたり、友だちと相談したりして、すぐに慣れていきました。さいごは、竹串の先にマシュマロを刺し、焚き火で焼いて食べる体験を楽しみました。
教室に戻って、山本さんが自分で作られた竹細工を見せていただきました。そして、木や竹は何に活用できるかを、みんなで考えたり、教えてもらったりしました。生活雑貨の材料として、住まいの材料として、あるいはエネルギーとして…、木や竹が、自分たちの生活にいろんな形で活かせることがわかりました。
その上で、山本さんは、木も竹も、「再生」する資源だからなくならない。でも、成長するスピードは一定なので、使いすぎてしまうとなくなってしまうから、使い方を考えなければいけない、というお話もされました。
そしてさいごに、私から、南比都佐小の森とびわ湖とのつながり、MLGsについてのお話をしました。身近な森を大切に活かすことが、SDGsにもMLGsにも寄与することであることをお伝えしました。
子どもたちに起きた変化
これらの活動をしたあとで、子どもたちは、下記のような感想を寄せてくれました。
- 火を起こす係になって「枝を短く折って入れるだけだし、いけるか。」と思っていたけど、やってみるとなかなか火が大きくならなくて驚きました。
- 森の豊かさを知ったし、木で色々なものを作る方法を教えてもらいたいです。
- おじいちゃん家に行けば竹がいっぱいあるから、色々なものをいっぱい作りたいです。
- 木は色々なものに使え、「再生」できるけど、むやみやたらに切らないようにしたい。
- 木や竹をちょっと加工するだけで生活に必要なものになるのが改めてすごいと思ったし、それを知らずにプラスチックばかり使っていたから、竹の割りばしなどの環境にいいものを買ってみたい。もっと色々な使えるものを竹で作ってみたくなった。
- 今の森の状態を知ってそれをどうやったら解決できるのか、私たちに何ができるのか考えていきたい。
- 木や竹は割りばしだけでなく、コップやカゴ、容れ物などのたくさんのものが作れることが分かりました。なのでこれからは試しに作ってみたいです。ハンマーで竹を切ったときにすごく気持ちよかったしうれしかったです。
- 木を割る担当になって見本を見たら、すごくかたそうで怖かったです。実際に一度持ってみたら片手で持てて大丈夫だなと思っていたけど、途中から手が痛くなって思ったより疲れました。竹を削るのも疲れました。けど今度は竹でお箸を作ってみたいです。
- きちょうな体験ができました。基本のものは作れると教えてもらってうれしかったです。木や竹でできるものをたくさん知りました。
- 竹で物を作ったことがないから小さいものでもいいから作ってみたい。竹のスプーンがかわいかったから作ってみたいと思った。
- 火はとても暖かかったし、燃料の置き方が分かったから家でもしてみたい。これからはもっと自然を大切にしていきたいし、再生できるようにしたいです。
- 僕の仕事は火を育てる役目だったけどあまり火が出なくて、「ばってんに木を置くとよく燃える」と教えてもらったのでやってみるとぼうぼう燃えてうれしかったです。
- MLGsを知って、今やっていることがいいことだと知ってよかった。そして色々なことを教わって自分でも進めていきたい。
- 今回の活動は琵琶湖にいいと分かって驚いた。琵琶湖にも地球にもいい活動をしたい。
当初のねらいどおり、自分の身の周りには資源があること、それを自分も活用できることを、実感を持って理解してくれたようです。また、自分も木や竹でものを作れるようになりたいという想い、おじいちゃんの家にあるものを活かしたいという思いなどが募り、次なる行動への意欲も高まったようです。
今回の取り組みを通じて実感したのは、子どもたちがふだん生活している地域の中で、今まで活用してこなかったもの(今回は木や竹)を、自分の手で活かす体験をしたり、身近なものを活かす暮らしをしている人と出会ったりすることの大切さです。
今後のMLGsの取り組みも含め、子ども・若者のみなさんが、身近な地域の中で、ほんものの体験を通じた学びができる環境を、はぐくんでいきたいと思います。
(村上 悟)