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“関わりを考え、見つけるMLGs” 〜シン・びわ湖なう〜vol.3 岸本直之さん

こんにちは。MLGs案内人の畠です。

今回は、「琵琶湖の健康診断書」として2015年から毎年発行されてきた「びわ湖なう」をもとにMLGsの評価報告書として新たに編集・発行された、「シン・びわ湖なう2022」を紹介します。

発行にあたってキーパーソンとなった岸本直之さん、佐藤祐一さん、そして三和伸彦さんの3名にお話を伺いました。3本まとまったシリーズでお伝えします。
*これまでの「びわ湖なう」はこちらから、また「シン・びわ湖なう2022」はこちらから

第三弾は、龍谷大学先端理工学部 教授 / 岸本直之さんです!

岸本さんは、京都大学出身。現在は龍谷大学先端理工学部環境生態工学課程にて「水質システム工学」を研究されています。今回のインタビューでは、岸本さんの経歴やこれまでの経験などを踏まえ、「シン・びわ湖なう」の発行に携わった背景や思いをお聞きしました。

Q. 岸本さんと滋賀県・琵琶湖の関わりについて教えてください。

ー 京都大学の学生時代に、自身の卒業研究や研究室の他の学生の研究の手伝いなどでよく琵琶湖に出向いて研究や実験を行っていました。実際に滋賀県庁の皆さんや滋賀県の方々との深い付き合いが始まったのは2009年、2010年くらいからですね。当時、琵琶湖淀川水質保全機構の会議で基調講演をする機会があり、琵琶湖のCOD(化学的酸素要求量)とBOD(生物化学的酸素要求量)について話題提供をした後に、その会場にいた琵琶湖環境科学研究センターの方々と琵琶湖の性質について深く研究をするご縁をいただきました。他にも、以前京都大学で教えていたことがあったので、実際に琵琶湖に学生を連れてきてプランクトンや淡水赤潮などに関する実習実験をすることがよくありました。龍谷大学に移ってからは、大津にある瀬田キャンパスに研究室があるので、すぐそばに琵琶湖があり今でも多くの学生が琵琶湖に関わる研究や学びを展開しています。

今回の「シン・びわ湖なう2022」については、私がMLGs学術フォーラムの座長を担当している関係で、これまで以上に深く関わらせていただきました。

大津港にて学生の船上実習開始前のブリーフィングの様子

Q. 「シン・びわ湖なう2022」作成に込めた思いについて教えてください。

ー 私は、琵琶湖は生きていると考えています。人が生活の中で関わりあって今の琵琶湖があると思っていますので、再生して元に戻すことが必ずしも良いとは言えないと思います。多くの方が「人が琵琶湖を汚していて、自然を守らなければ」と感じるかもしれませんが、人間も生態系を構築している一部です。人と琵琶湖の関わりによって今の琵琶湖が出来上がっていると思うので、現代の人が琵琶湖に何を望むのか、何を求めているのかによって、琵琶湖との関わりや琵琶湖のあるべき姿も変わってくるはずです。もっと言うと、きっと人によってそれぞれ見えている琵琶湖の姿が違っていて、理想とする琵琶湖の像が一致していないのかもしれません。当然のことながら、人が見ている湖沼の姿は年々変わりますし、それは違っていいものです。琵琶湖を創造する中で、過去の姿に戻すのではなく、琵琶湖と人々の関わりを考えていくという視点がキーになると思います。その上で「シン・びわ湖なう2022」が琵琶湖のこれからについて皆さんが能動的に考えていくきっかけになれば良いと思います。

「MLGsみんなのBIWAKO会議/COP1」での岸本さん

Q. 岸本さんのこれまでの活動を踏まえて、今後、若い世代に繋いでいきたいことは何ですか。

ー 私は研究者として、普遍的な事実や知識、技能などに興味があります。いますぐに役立たなくとも、研究の蓄積がいつか大きなヒントになったりするものです。そうした知の集積によって、様々な知識や技術群を作り上げていきたいと思っています。仲間の研究者には「研究範囲広すぎない!?」と驚かれますが、環境問題は総合科学なので、プランクトンなどの水中微生物から排水処理技術までなんでも研究しています。全体を俯瞰して見つつ、必要に応じて深く取り扱い、最終的に様々な課題の解決に役立てていきたいと思っています。大学は人材育成をする機関なので、学生の皆さんが興味のある分野だけではなく、一歩引いて様々な疑問や問いを見つけて深めていってほしいと思っています。

2022年7月9日のWET2022(Water and Environment Technology Conference 2022)でのWET Excellent Paper Awardのオンライン受賞講演の様子

 

 先述しましたが、人材育成がやはりすごく大切だと思っています。「この大学に来てこれを学びたいです!」という学生がいたり「どんなことがこの大学では学べますか?」という質問をよく受けますが、今、事実として知られているものは高校や中学校で既に教わっていると思います。大学は失敗していい場所です。失敗が許されるのが大学です。自分で試行錯誤して物事を進めていくプロセスを学ぶのが大学という場だと思っていますし、そうした応用力や思考力が社会に出る上で大切になっていくと思います。

2022年夏のオープンキャンパスで来場者に砂ろ過実験装置の説明をしているところ

Q. 最後に、MLGsを今回初めて知る方々へのメッセージをお願いします!

ー 人も自然の一部です。全て繋がりあって存在しています。そうした繋がりを大切にして、各人にとって身近な環境を大切にしてほしいと思います。特に滋賀県は、行政や市民を含め全体として琵琶湖という大きな存在があり、できるだけゴミを流さないようにリサイクルしよう、などと些細なことでも環境保全に気を遣われている方が多い印象です。琵琶湖を題材にして、ぜひ人と人との繋がりや今後の琵琶湖の姿を考え、MLGsなどを活用してより良い地域にして行ってほしいなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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