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お魚を通して伝えたい琵琶湖のこと(絵本「はじめてのびわこの魚」)

こんにちは。MLGsライターの豊田真彩(立命館大学)です。

この記事では、11月6日(日)に開催された「おいで野洲まるかじりフェスタ2022~森・里・湖の魅力大集合~」にて行われた、”滋賀のお魚博士”黒川琉伊くんとびわ湖の幸のおいしさを発信されている「BIWAKO DAUGHTERS」中川さんとのお話会の様子と、琉伊くんの絵本「はじめてのびわこの魚」についてご紹介します。

魚のお話会

イベントのステージ企画として行われた「魚のお話会」には、滋賀のお魚博士の黒川琉伊くんと株式会社FLOATING LIFEの中川善一さんが登壇されました。

ステージでのトークイベントの様子

現在中学校3年生の黒川琉伊くんは、2歳の時に滋賀県へ引っ越してきてからずっと魚に興味を持ちながら、研究に没頭し、今では「お魚博士」として滋賀県でも有名人です。もともと魚を捕まえるだけではなく、それを観察して調べることに興味があったそうで、小学生の頃から図書館の専門書を使って生体や生息環境について調べたり、自分の水槽でしばらく飼育したりするなど、魚にとことん向き合ってこられました。トークセッションでも、魚の名前が次々出てくるだけでなく、そこから交配と雑種のお話や捕獲禁止のお話に広がるなど、その知識量に圧倒されました。

琉伊くんが近所で見つけたお魚たち

もうひとりの登壇者、中川さんは、琵琶湖の幸を使った飲食業や、レジャー事業を展開されている株式会社FLOATING LIFEの代表をされています。当日は、「BIWAKO DAUGHTERS」として出店され、ビワマスの漬け丼や琵琶湖のニゴイと県産の豚肉を使った自家製マキマキソーセージのバーガーなどを提供されました。中川さんは、琵琶湖のほとりで生まれ育ち、小さい頃から琵琶湖でブラックバス釣りをされていたそうです。その時、外来魚であるブラックバスを駆除してしまうのではなく、なんとかおいしく食べてあげられないかという気持ちで、キャッチアンドイートを始めたという、現在の活動につながる背景をお話ししてくださいました。

中川さんが出店されていたBIWAKO DAUGHTERS

お二人の自己紹介のあとは、「琵琶湖が好きな2人がそれをどんな表現にしているのかを話そうよ」という中川さんの提案から、トークセッションがスタートしました。

中川さんは、漁師として琵琶湖に触れる中で、その楽しさや魅力をどういう形で伝えるか考えた結果、琵琶湖を表現できるいろんな手段を見つけていったのだそうです。具体的には琵琶湖のカレンダーや甲賀市土山産の茶葉に琵琶湖をイメージした青色をブレンドしたお茶など、まず琵琶湖に興味を持ってもらうきっかけになることを目指しておられます。一方、琉伊くんは絵本という形で琵琶湖を表現しています。絵本を出版するきっかけは、番組に出る際、魚を説明するために描いたポストカードが出版社の目に留まったことでした。琵琶湖の環境問題に関心があり、目の前の魚のことだけではなく、小さな子から大人まで琵琶湖の生態系や環境問題までをみんなに知ってもらいたい、そのきっかけを、絵を通じて作りたいという想いから本を作ったと琉伊くんは言います。

お二人は表現する手段がそれぞれ違うけれど、琵琶湖を愛していること、自分の好きな手段で表現できるのは楽しいと感じていること、という共通点がありました。

琉伊くんの絵本と琉伊くんがデザインした特別パッケージのゆりかご水田米

それぞれの好きな魚の話や琵琶湖の魚を使った料理の話などで盛り上がり、あっという間に時間は過ぎました。そして最後に、中川さんから琉伊くんに今後の抱負について質問がありました。「人の手が入った琵琶湖もいいけれど、琵琶湖の原風景も見てみたい」「琵琶湖で研究を続け、多くの人に身近な自然に目を向けることから琵琶湖をはじめとしたより大きな自然環境に興味を持ってもらいたい」と琉伊くんは力強く語り、トークセッションを締めくくりました。

琵琶湖を愛し、それを表現することで琵琶湖の魅力を伝えていらっしゃるおふたりだからこその掛け合いがあり、とても楽しいトークセッションでした。

絵本『はじめてのびわこの魚』

トークイベントに登場した黒川琉伊くんの著書『はじめてのびわこの魚』
この本は、2022年7月1日、びわ湖の日に出版されました。

「はじめてのびわこの魚」の絵本

この絵本は、魚への興味からそれを記録するためにイラストを描くようになった琉伊くんのスケッチノートのような一冊です。絵本には、ビワコオオナマズやビワマスなどの琵琶湖の固有種のほか、外来魚のブルーギルやブラックバスなど50種類が、カラフルな色鉛筆で描かれています。魚のイラストだけではなく、これまでの経験から得た琉伊くんのメモも書かれていて、魚にまつわる知識もぎっしり詰まっています。

トークイベントでお話されていたように、絵本を通じて大人から子どもまで一緒に楽しく琵琶湖の環境について考えられる一冊になっています。オンライン販売などもあるようですので、オンラインショップや書店にてぜひ手にとってみてください!

最後に

最近は車で通っていても魚がいそうな水路がわかるほど、観察力や見極め力が身についてきたという琉伊くん。イベント当日の朝も近くの水路で魚とりをしていたそうで、その魚を持ってきてくれました。水槽にいる魚のイラストをその場で描いたりして、あっという間に展示ブースができていました。

展示している魚のイラストをさらっと描いている琉伊くん

ブースには小さい子から大人までたくさんの人が集まり、興味津々に水槽を覗き込んでいました。中には絵本を読んで琉伊くんに手紙を書いてくれた男の子もいて、こんなふうに琵琶湖や自然環境のことに興味を持つきっかけをつくり、そういう人の輪を広げていっている琉伊くんの素晴らしさを改めて感じられました。

お魚が好きな人も、あまり興味がなかったという人も、琵琶湖に広がる大きな世界の入口として、まず琉伊くんの素敵な絵本を覗いてみてほしいなと思います。琉伊くんと中川さんの想いが多くの人に届きますように、そしてこれからもおふたりご活躍を応援しています!