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MLGsフォーラム開催レポート 〜プラごみ問題から琵琶湖と淀川・大阪湾のつながりを考える〜

こんにちは。

MLGs学生ライターの明山真愛(滋賀大学)と久徳大貴(立命館守山高等学校)です。

今回は、2月16日(木)にオンラインで開催された「MLGsフォーラム〜プラごみ問題から琵琶湖と淀川・大阪湾のつながりを考える〜」に参加した学生ライターがイベントの様子を報告します。

当日の次第と登壇者一覧

はじめに

現在、海洋プラスチック問題が国際的な問題となっており、早急な対策が必要となっています。琵琶湖も同様にプラスチック問題が起こっています。琵琶湖のごみは瀬田川を通じて淀川・大阪湾に流れ込むため、琵琶湖だけでなく、下流の水環境のためにもプラスチックごみ削減に向けた取り組みを進めていかなければなりません。

今回のMLGsフォーラムでは、大阪湾の無人島に流れ着く海洋ごみの研究に取り組まれている千葉 知世さんの基調講演と佐藤 祐一さん、東坂 波也翔さんの報告から琵琶湖・淀川流域全体のプラスチックごみ問題の状況を学び、その対策に向けた産学官民の協働のあり方について議論をしました。

はじめに、MLGs案内人幹事で滋賀県理事 三和 伸彦さんより挨拶がありました。三和さんはこれまでのMLGs達成に向けた取組についてお話しされ、琵琶湖・淀川流域全体のプラスチックごみ問題への理解をさらに広げ、削減に向けた行動、協働のきっかけづくりとなってほしいという想いを語られました。

開会挨拶をされるMLGs案内人幹事で滋賀県理事の三和さん

 

大阪湾のプラごみ問題と流域協働:友ヶ島から見えて来たもの

基調講演として、大阪公立大学現代システム科学研究科准教授 千葉 知世さんより、「大阪湾のプラごみ問題と流域協働:友ヶ島から見えて来たもの」というテーマでお話いただきました。

千葉さんは一般社団法人加太・友ヶ島環境戦略研究会(KATIES)を設立し、大阪湾の友ヶ島を拠点に海洋プラスチックごみ問題に取り組んでいらっしゃいます。本日は最初から琵琶湖に着目するのではなく、そこから通じる大阪湾という目線でまずはお話を頂きました。滋賀県では日常的に、琵琶湖は滋賀県民共通のもの「コモンズ」である意識が多いですが、大阪湾も地図で見ると様々な地域で共有されている「コモンズ」であるものの、忘れ去られているものであるとご提示いただきました。

地域住民の大阪湾への意識を調査しても、ネガティブなものが多く、実際に研究フィールドの大阪湾の南端にある友ヶ島では、多くのプラスチックごみが漂着している現実を共有いただきました。プラスチックごみ問題は単に使わなければ済むという問題ではなく、自然環境、人間環境、経済、社会的公正など、多面的かつ複雑な問題である、という問題提起がありました。

2019年6月に開催されたG20大阪サミットでは、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が掲げられ、2050年までに大阪湾に流入するプラスチックの正味量をゼロにするという目標が首脳間で共有されました。また、千葉さんは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)に2022年度に採択された「大阪湾プラごみゼロを目指す資源循環共創拠点」(大阪大学)に参加し、流域圏全体でプラスチックごみ問題に取り組んでいることも紹介されました。

最後に、千葉さんは「『楽しくないと広まらない』これからのプラスチックごみを減らすためには一般市民みんなで取り組んでいく必要があり、そのためにはこの問題をみんなが楽しめる方法で広めていくべき」とまとめていただきました。

琵琶湖・淀川流域を流れるプラスチックごみの量はどれくらいか

次に、琵琶湖環境科学研究センターの専門研究員である佐藤祐一さんより、「琵琶湖・淀川流域を流れるプラスチックごみの量はどれくらいか」という事例報告が行われました。

プラスチックごみのほとんどは陸上由来であり、海に流入・漂着・堆積する流れが最も多いことを説明しました。また、大きなプラスチックの問題と小さなプラスチックの問題があり、小さなプラスチックのことはまだよく分かっていないとのことで、5㎜より小さいものはマイクロプラスチックと呼ばれています。過去の調査やシミュレーションモデルやAIを利用したモニタリングから、琵琶湖・淀川流域におけるプラスチックごみの行方をストック・フローの観点から概観された結果をご報告いただきました。

その結果、琵琶湖におけるプラスチックの収支を概観すると、滋賀県の廃プラスチック発生量は約9万トン/年で、河川を通じた流入量はこの0.1%程度の数十万トン/年と推定されました。一方で、湖岸や湖底にも同じくらいのオーダーのプラスチックが漂着または堆積している可能性があることも示唆しました。また、淀川から大阪湾に流入するプラスチックの量は年間100~数百トン程度と推定されています。しかし、これらの結果は精度や方法が異なる調査結果を結び付けているため収支の信頼性に欠ける部分があり、今後の調査により、これらの精度を高めていくことが今後の課題とされていました。

清掃活動の現場から見える琵琶湖・淀川・瀬戸内海のごみ問題

次に、淡海を守る釣り人の会 東坂波也翔さんより、同会が琵琶湖・淀川水系で開催している清掃活動の事例報告が行われました。本年の取組として、滋賀県守山市の第2なぎさ公園や草津市の湖岸緑地志那1周辺、淀川城北ワンドなどで行われた活動で多くのプラスチックごみが回収され、清掃活動の重要性について強調しました。

東坂さんは「ごみ問題は誰にでも関係があり、自分事であること」を強調し、物の適切利用・処分、そして拾えるときに拾うことが大切だと訴えられました。また、地域で協力してごみ拾いを行うことで愛着を育み、綺麗な環境を保つことができるとも話されました。さらに、釣り人の目線から見ても、琵琶湖や淀川水系にてプラスチックごみをよく見かける事があり、水位変動や風の影響によって河口部やヨシ帯などにゴミがたまっていく事例を紹介いただきました。

東坂さんは最後に、「好きだからこそ悪い状態に気づく事ができ、未来に繋げたいと思う。そのような取組を皆で地道に行う事が大切である」と訴えました。

ディスカッション「琵琶湖・淀川・大阪湾のプラごみ削減に向けた協働のあり方とは?」

まず、登壇者のお一人である株式会社平和堂 サステナビリティ推進室 濱崎篤彦さんがお話になりました。平和堂では地域と共に発展するという考えのもとトレーの使用量を減らす取り組みや、生分解性のスプーン・フォークを提供するなど、スーパーマーケットビジネスの立場からできるプラごみ削減の事例をご共有いただきました。

また、BIWAKO ZERO WASTE共同代表 金子利佳さんは、周囲の人から悪意はありませんが、環境問題に取り組んでいることについて「難しそう」「意識高いね」「ストイック」「しんどそう」と言われることもあるという課題意識も持っていらっしゃいました。まずは禁止・問題という我慢から入るのではなく、「おしゃれ」や「やっていて楽しい」というコミュニティにいることが楽しいと感じる環境作りが大切とも提言されていました。

千葉さんは、環境意識には地域差があり、「水辺に近いところに住んでいて、日頃の生活の中でごみを目にするかどうか」ということでも違ってくる事を示唆されました。そのため、市民・消費者の実感を創り上げる事でごみ問題に関心が向いていくと考えられているとのことでした。

その上で佐藤さんは、琵琶湖版SDGsであるMLGsは、行政が目標や活動を押しつけているのではなく、市民が自ら考えて自ら行動するという展開につながっており、驚きであったと話します。

ディスカッション内では地域ごとの条例に応じたポジティブな買い物意識の変化等を取り上げつつ、一企業としてのできる範囲を超えた、上流であるメーカーの梱包を変える事や、市民から受け入れられるかどうかの線引きなど、現実的な課題感の掘り下げが行われました。

 

登壇者の皆さん:千葉さん(左上)、佐藤さん・東坂さん(中央上)、金子さん(右上)、濱崎さん(左下)、辻さん(右下)

 

ディスカッションのまとめ

ディスカッションのまとめとして、佐藤さんと千葉さんよりお話を頂きました。

2つの「上流」の考えを持つ

  • 事業の上流

プラスチックのリサイクルや、そもそもの物品を変更すると言う観点では、生産者・メーカーなどの事業面での上流を意識する必要があることが分かりました。実践例としては、各メーカーが統合して同じ容器にすることでリサイクル・リユースしやすくなる環境整備を行うことが検討できると考えられました。

  • 河川の上流

大阪湾から考えたときの、上流、つまり琵琶湖からの河川の事を意識することです。シミュレーションや検討を行う中で、琵琶湖はプラスチックごみが溜まっているシンクになってしまっている可能性があります。

また、海にゴミが出てしまうと手で取れないような細かいゴミになってしまっている場合が非常に多くあり、漂着したものはその中でも、ほんの一部で有ることが分かります。そのため、取りにくいゴミになる前に、水辺から離れた地域に住む方々とともに、積極的な取組を行わなくてはいけないことが分かりました。

立場を超えて活動をする

立場が違う方々が集まって、それぞれの知見やビジネス、取組について話し合うことによって、情報交換を行い、それぞれの領域で改善できる可能性があります。今回のような取組の厚みを増していくことで、より良い取組に繋げて行ければと思います。

最後に

本フォーラムに参加して、環境問題に対して、立場を超えて活動していくことが大切だと思いました。

自治体の人は自治体、企業の人は企業ではなくて、公共の問題であるごみの問題を一緒に扱うことが大切です。これは組織だけでなく、私自身や周囲の人が琵琶湖は琵琶湖、大阪は大阪というように別々に捉え、身近な環境のことだけに意識がいってしまっている部分もありました。プラスチック問題は誰にとっても自分ごとです。みんなが取り組める方法を考えていけると良いと考えます。

登壇者の皆様、素敵なお話ありがとうございました!