MLGs WEB学生ライターの山岸美緒・清水楓絵(滋賀県立虎姫高等学校)です。今回は、鮒ずしを通して発酵の魅力を発信している長浜市の「徳山鮓」の店主・徳山浩明さんにお話を伺いました。(取材日:2021年8月15日)
余呉湖の絶景を見渡せる場所に位置する徳山鮓。ここでは店主で発酵料理人の徳山浩明さんがこだわりぬいた近江の郷土料理「鮒鮓(ふなずし)」や、旬の地元の食材を使った発酵料理を堪能できる。また、四季折々の景色を眺めながら宿泊もできる和風オーベルジュとなっている。
徳山鮓の飽くなき挑戦
健康志向が高まる中、世界では日本食が大注目され、それを支えている発酵食も、免疫力の向上や疲労回復の効果があり、大きく脚光を浴びている。
滋賀県の発酵食といえば鮒ずしで、その鮒ずしも、近年人気を集めている。徳山鮓のメイン料理である「鮒鮓」は従来の鮒ずしを覆した独自の発酵料理だ。店主の徳山浩明さんは24年前から本格的に鮒鮓の研究を始められ、鮒鮓は進化を遂げ続けているという。気品のあるお皿や盛り付けは鮒ずしに苦手意識のある方を心躍るように感じさせるものであり、鮒鮓を引き立てる食材との調合には稀有なものを感じる。魚の生臭さはなく、鮒ずし独特の強い酸味は上品に残り、旨味は凝縮されている。
食材を余すことのない工夫
鮒鮓作りの際に余る「飯(いい)」と呼ばれる発酵したお米はその残りを余すことのないようにソースやデザートに美味しく活用している。その中でも飯から生まれたアイスクリームの製造方法については特許を取得しているという。
徳山鮓では、鮒鮓の主な原料のニゴロブナをはじめとする湖魚のほか、鰻や琵琶マスなどの地元で捕れる湖魚料理を提供している。また、周囲は山々と田園風景に囲まれ自然の恵みを存分に味わえる場となっている。琵琶湖、余呉湖の魚を活かした湖魚料理を楽しみ、自然の恵みを感じる場としてMLGsの2番「豊かな魚介類を取り戻そう」や9番「生業・産業に地域の資源を活かそうに通じている。
そして、滋賀の清らかで豊かな水を巧みに取り込む文化の一つに鮒ずしがある。しかし近年外来魚の圧迫、湖の水質悪化などでニゴロブナが減少、高価となり、家庭で作られることは減少し、年々身近ではなくなってきている。
徳山鮓さんはこの滋賀の食文化を、長年の研究により独自の発酵料理の「鮒鮓」へと進化させ続けている。さらに、鮒ずしを通して今、世界から注目されている発酵文化の素晴らしさを日本に留まらず世界にも発信している。これらの取り組みもまた、MLGsの12番「水とつながる祈りと暮らしを次世代に」や13番「つながりあって目標を達成しよう」につながっているだろう。
発酵、鮒鮓の想い
店主の徳山浩明さんは「気候も温度も湿度も発酵に適した環境の余呉から、伝統の食文化を、先人の方々の知恵と共に広げていきたい」想いを語った。
この記事は、「MLGs ライター講座」の受講生の皆様によって取材・執筆いただきました。
取材協力:徳山鮓(https://tokuyamazushi.com/)