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亀岡市のプラスチックごみゼロの取組を視察してきました

こんにちは、NPO法人碧いびわ湖のリポーター、GENGENです。

プラスチックごみ削減の取り組みで日本のトップを走る京都府亀岡市に視察に行ってきました。亀岡市は、2021年1月にTV番組「ガイアの夜明け」で取り上げられたことで一般にも広く知られるようになったまちです。

誰が、何のために行ったの?

 今回の企画は、「MLGsプラごみ協働テーブル」が行ったものです。MLGsプラごみ協働テーブルは、びわ湖や川のプラスチックごみ問題に関心がある様々な主体が集まり、「協働によって環境中のプラごみを減らし、悪影響を減らそう」という目的で、昨年12月に設置されました。事業者、行政、市民団体から約30団体が集まって構成されています。この仲間で集まるのは、ワークショップ、学習会に続いて3回目。
 訪問先は、亀岡市役所、パティスリー・ペルル、アルプラザ亀岡です。

 朝9時半、10人が滋賀県庁からバスに乗り込んで、いざ出発。
 学生時代にバスガイドのアルバイト経験があるという世話人Tさんの見事な案内で、プラスチック問題についての情報交換をしているうちに最初の訪問先の亀岡市役所に到着しました。

着くなり、おさかな男子たちがロビーの水槽にかぶりつきに!

 「アユモドキだ!!」「うわー、アユモドキだ!」「びわ湖では絶滅しているんですよ!」 興奮気味に激写する皆さんです。
(アユモドキは亀岡市の魚で絶滅危惧種です。サッカースタジアム建設計画のあった中、市民運動によって生息域が保全されました)

プラごみゼロをめざす亀岡市の取組

 いきなり違うところで盛り上がってしまいましたが、視察はここからが本題。
 地下の「開かれたアトリエ」で環境先進都市推進部・環境政策課の課長さん以下4人のスタッフの皆さんが待っていてくださいました。早速、亀岡市でのプラスチックごみ削減の取り組みについて聞かせていただきます。

 亀岡市は「保津川下り」の観光で有名です。亀岡から嵐山までの約16キロの渓流を、船頭さんが巧みに操る小舟で下っていきます。

 2000年頃から、蛇行する保津川に漂着するごみが深刻化していき、二人の船頭さんがごみを拾い始めたことをきっかけに、2004年頃から市民活動が始まりました。それが原動力となって行政を巻き込んだ取り組みがスタートしました。

 2012年には第10回海ごみサミットを、内陸部としては初めて亀岡市で開催し、海に面していなくても川からのつながりでごみについて考える必要性を提起しました。モニタリング調査では、嵐山から流した発信器は大阪湾まで1日で到達することを確認しています。

 子ども海ごみ探偵団を組織し、海岸での漂着ごみの調査を始めました。川から流出する海ごみの発生抑制を目指して、今も継続して活動しています。

 2015年には環境先進都市をめざすビジョンを策定し、2018年に亀岡ゼロエミッション計画の策定を経て、12月に市議会と共同で「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発表し、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちをめざすと宣言しました。そして、海洋プラスチック問題を市民が自分事と考えるための取り組みを展開しています。

 2020年には日本で初めてのプラ製レジ袋提供禁止条例を制定し、2021年1月より施行しました。
 条例の制定には各方面の理解を得るために相当な努力が必要でした。事業者と協議会を通じて意見交換を重ねると、消費者側に理解があればできるとわかりました。また、市内の全自治会に出向いて説明会を行うと、7割が肯定的に捉えていることがわかりました。さらに、亀岡100人会議を開催し、集まった市民とともに世界の状況を学び、想いを共有して環境ロゴマークを作成しました
 そして、プラ製レジ袋の提供禁止に踏み切ったのです。事業者と消費者の負担軽減のため、補助金を出し、メッセージをデザインした紙袋の共同購入も行っています。
 レジ袋の消費量は、レジ袋を有料化した2019年に大きく下がりましたが、条例の施行後に一段と下がり、2019年4月に比べ2021年10月は1.8%になりました。また、エコバッグの持参率は98.1%となっています。取り組みを始めた事業者からは、消費者におおむね理解されていて、大きなトラブルもなくスムーズに導入できたことがわかりました。
 条例の施行後は散在ごみに占めるレジ袋の割合も大幅に減りました。

 エコバッグの普及に向けて、環境と芸術を融合させた取り組みもあります。
 亀岡で人気のアクティビティである、パラグライダーの廃棄される翼で制作した巨大エコバッグを空から吊り下げ、さらにそれを解体してマイエコバッグを作るワークショップの開催。生地をアップサイクルして作るHOZUBAGの生産拠点を整備し、商品化を後押ししています。

 そのほか、プラスチックごみの削減などに取り組むお店を認証する「リバーフレンドリーレストランプロジェクト」、給水スポットづくり、リユース食器利用促進事業なども展開しています。

 市民向けの取組として、2020年から始まったエコウォーカー事業は、市民がウォーキングのついでに清掃活動するのを応援するというもの。登録者にはごみ拾い専用のトングや浄水器つきのボトル、オリジナルHOZUBAGを進呈し、現在1204人が登録しています。
 翌年には、エコウォーカーキッズ・チャレンジプログラムが始まりました。年長児が散歩をしながらごみを拾い、拾ったごみを分別調査しています。今年度から市内のすべての保育所・幼稚園で実施されます。

 さらに、多彩な企業との協働事業が広がっています。環境への取組に一緒にできることはないかと企業から声がかかることから、様々な事業展開へとつながりました。
 ソフトバンク(株)やユニクロ亀岡店とは環境教育分野での連携、BRITA Japan(株)やウォータースタンド(株)とペットボトル削減の連携、タイガー魔法瓶(株)と廃棄ステンレスボトルのリサイクルなど、13の事業が行われています。

 そして、次世代の育成のために「保津川 環境とふるさと学習」を行い、小学4年生がラフティングボートで川を下る体験を通じて環境を学んでいます。

 次のステップとしては、ペットボトルの削減、ごみゼロ理念を浸透させること。
 第5次亀岡市総合計画には重点テーマの一つに「世界に誇れる環境先進都市へ」を掲げ、基本方針の一つに「地球にやさしい環境先進都市づくり」を置いています。
 環境を軸にしたブランド力向上とシビックプライドの醸成に向けて取り組んでいきます。

 多方面の取り組みに圧倒されつつも、私たちからもたくさんの質問をさせてもらいました。すごいボリュームになったのでここにはとても書き切れません。課長さんだけでなく、他の職員の方からも現場の話を聞かせていただき、皆さんが誇りを持って、かつ楽しみながらプラごみゼロに取り組まれている熱意が伝わってきました。首長が本気になって、良い人材など市の資源を集中的に投下するとここまでできるのかと肌身に感じました。
 予定の時間を大幅にオーバーして対応いただき、感謝しかありません。

お昼休み

 お話を伺った「開かれたアトリエ」内のATLR CAFEは、環境に配慮したカフェレストランでした。プラスチックごみゼロはもちろん、フードロスの低減や地産地消、フェアトレード、SDGsにも取り組んでいるとのことで、安心しておいしくいただきました。

 アトリエ内にはさらに、プラごみゼロの取組をアーティスティックに紹介するコーナーがあったり、誰もが持ち帰って利用してもいい木材などの資材が置いてあったり。図書コーナーを熱心にのぞいていると、「この棚を管理している○○です。ありがとうございます」と声をかけられたりして、なんだかここにいるだけで何かおもしろいことが起こりそうな予感がするスペースでした。

小さな個人店での取組 パティスリー・ペルル

 午後からは、前回の学習会の講師であり、そこから協働テーブルのメンバーに加わられた「プロジェクト保津川」代表理事の原田禎夫さん(大阪商業大学公共学部准教授)が合流しました。
 原田先生のご紹介で、地域の事業者の取り組みとして、パティシェの山本美紀さんからお話を伺います。亀岡市内で二坪ほどの小さな洋菓子店、パティスリー・ペルルを開いて11年目だそうです。プラスチックごみをなるべく出さない商品販売を工夫されています。

 お話の前に、持って来たお菓子を並べてくださり、その美しさにすでに私たちの目は釘付け……。

 山本さんは15年ほど前、フランスで1年の修行をされている間に、使い捨てプラスチックゼロの社会を体験されて衝撃を受けました。日本では、クッキーなどの焼き菓子は中身が見えてほしいという要望が強く、プラスチック包装が多くなっています。商品を世に出していく責任を感じて、食品衛生法上で無理なところ以外は、プラごみゼロに取り組んでいます。

 去年の2月に誕生したお菓子「小さな保津川の世界」は、プラスチックを使わない商品として開発されました。コロンとしたびんの中に涼しげな世界が広がっています。ココアクッキーで土、青いメレンゲで水、ピンクで桜石(亀岡市の石)を表し、綺麗な川をお魚が泳いでいる様子が表現されており、一瓶にコンセプトが詰め込まれています。

 洋菓子はプレゼント品だから包装が大変です。
 焼き菓子は中身が見えなくてもわかるよう紙袋に商品名を書き、1袋に2枚入れることでコストを下げ、紙のリボンをかけて簡易包装でもかわいくして渡しています。季節によって栗の葉やハーブ等を飾ったり、脱プラのラッピングに工夫を凝らしたりしています。クッション材も、廃棄されるリネンの端切れに変更しました。お客さんが持ち込んでくれたら、風呂敷にもエコバッグにも包みます。

びんを紙箱に入れて紙袋に入れると1000円に。袋をミニ風呂敷に替えると1200円に

 さらには、地域密着で農家さんと直接やりとりをして、流通の段階でもプラスチックを使わない工夫をしています。よそでは食べられないものを目当てにお客さんが来てくれます。

 小さなケーキ屋さんでもこんな取組ができるんだ!とたいへん感銘を受けた私たち。たくさんの質問をさせていただきましたが、ここでは残念ながら割愛します。

 お話を一通り聞いたところで、お菓子購入タイム。それぞれお土産にたくさんいただいて帰りました。かわいい〜。なんといっても、ナチュラルでおしゃれじゃないですか。

大きな事業所での取組 アルプラザ亀岡

 バスで移動して、最後の訪問先は滋賀でもおなじみの、アルプラザ亀岡です。まずは店内を一回りし、売り場の様子を確認しました。

店内のパン屋さんにて。菓子パン一つひとつにシールが貼られ、そのまま渡されていました

 それから、店長の武内英幸さんと、総務次長の田中ゆかりさんからバスの中でお話を伺いました。

 条例でプラ製レジ袋が禁止になってから、現場では一つひとつの商品のシミュレーションをして、紙袋には入れられないものはどうすればいいかと市とも協議をしつつ、対応を準備しながら従業員全員への周知徹底を進めてきました。

 切り花などの水物は、レジで薄い袋を配付可能にして、さらに紙の包装紙を利用。衣料品、布団やラグなど住環境の大きな商品のように小脇に抱えて帰っていただくものは、これまで大きなプラ袋に入れていましたが、お中元お歳暮等で使っているエコ包装紙(のしと包装紙の一体化したもの)を巻いての対応に変更しました。
 例外はクリスマスラッピングです。これは一体資産(包装紙も入れて商品という考え方)となり、プラ製袋を使用。サニタリー商品はお客様自身で薄紙に包んでいただくこととし、購入点数が多い場合などは紙袋での対応とされました。

 一番困ったのは、条例の施行が1月1日だったため、オードブル商品、大きな刺身のようなものの販売が多くなり、お客さんとのトラブルがないか気にかかりました。亀岡市内では長く議論をしてきて理解されていましたが、里帰りなどで市外から来られた方にはその度に条例の施行の説明をしていました。結果的に、お客さんが自ら買い物袋を持って来られていて、大きいトラブルはありませんでした。

 条例の制定から施行までの間に、ニトリ、たこ焼き屋、ケンタッキーなど直営以外のお店に協力いただけるように準備を進めました。11月1日から告知ポスターを貼り、住民の方にはご理解をいただけたと思います。紙袋にそんなものを入れるの?というお客も未だにいますが、多くの方は風呂敷などでご理解いただいており、予想よりはうまく進められていると思います。

 平和堂のレジ袋削減の取り組みは、1991年からマイバッグ持参運動として始まっています。この店は1994年にオープンしており、エコバッグ持参で5ポイントを進呈しエコバッグの持参率を掲示しました。最初は40%台でしたが、今は98%になりました。残り2%は紙袋を購入されており、エコバスケットやエコバッグを購入される方もいます。

 万が一のためにビニールの風呂敷を準備していますがほぼ売れていません。紙袋の利用も少ないです。この店では1年で2800kgレジ袋を削減できました。本部のフォローもありスムーズに行きました。

 

 市の施策に協力しながら、お客さんに不便をかけないように一所懸命に知恵を絞って工夫されたのだなということが伝わるお話でした。
ここでもたくさん質問させていただいたのですが、この亀岡市でプラごみゼロ事業がよいスタートを切れたのは、市長さんが前線に立って本気の姿勢を見せ続けたことと、その実現のために市の担当者が市内の各関係者のところに足繁く通って説得して回られたことがあると感じました。

 原田先生によると、「いきなり禁止」は大変で、前年の8月に協定を結んでレジ袋の有料化を進めたときに、1店舗を除いて足並みを揃えてできましたが、準備のための時間がほしいと各店舗に言われたそうです。チェーン店ではPOSシステムを全国規模でいじる必要があり、一店舗だけではできないために、想いがあるだけでは進められないそう。行政と一緒になって地域全体で動きを作ることが必要なんですね。

開かれたアトリエにて、亀岡市環境政策課とペルル山本さんと記念撮影

視察を終えて

 プラごみ協働テーブルでは第2回の活動で原田先生から亀岡市の取り組みについてもお聞きしていましたが、それだけではわからなかった現場でのダイナミズムとそれを作った人々の想いを知ることができました。

 帰りのバスの中で一人ひとり感想を述べ合いました。
 「わくわくした」「内容が濃くて余韻がすごい」「一人から始まった思いでも実現できるんだ」「何があってもやり遂げるという強い想いがあればできる」「行政職員のパッションを感じた」「大きなものをやり遂げるには味方を増やすことが鍵だと思った」「企業からの提案を市が上手に受けて協働している」「顔の見える関係が構築できている」「ヒントにあふれていた」「帰ったら仲間に伝えたい」……など。

 MLGsプラごみ協働テーブルでは、ワークショップや学習会だけでなく、具体的な取り組みを考えたいという声も上がってきています。取り組みを進める上でも、今回の視察のような情報のインプットは大事だということも実感しました。アウトプットと両輪で進めていけるといいですね。

 本テーブルでは、今年の秋頃に一般向けのセミナーを開催したいと考えています。私たちがこれまで学んだこと、考えてきたことを、様々な立場の多くの人に一緒に聞いてほしいと思います。そして、滋賀からプラスチックごみを減らすための仲間になっていただけるとうれしいです。
 セミナーの具体的な内容が決まりましたら告知しますので、ぜひご参加ください。

 

 

【参考リンク】

亀岡市役所「世界に誇れる環境先進都市・亀岡市を目指す」
https://www.city.kameoka.kyoto.jp/site/kankyou/

ガイアの夜明け バックナンバー2021年1月5日 放送 第946回
「もうゴミにはしない!〜脱プラスチック2021〜」
https://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber4/preview_20210105.html

開かれたアトリエ
https://www.city.kameoka.kyoto.jp/soshiki/12/2417.html?fbclid=IwAR0ERgj1WhEq4pRrosiP_BE7D99N7OPwm9QYQ2sEiJneg5R18dD9hv2b3VE

パティスリー・ペルル
https://kyoto-perle.com/patissier/