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日本橋から滋賀県のストーリーを発信する「ここ滋賀」(マザーレイクニュース)

MLGs WEB学生ライターの豊田真彩(立命館大学)です。今回は、東京・日本橋にある、滋賀県情報発信拠点「ここ滋賀」の副所長 深井鉄平さんにお話を伺いました。(2022年7月17日)

日本橋高島屋S.C.や日本橋三越本店といった歴史ある百貨店など、昔ながらの東京の魅力を残している、東京・日本橋。この場所に、滋賀県情報発信拠点「ここ滋賀」がある。滋賀県内ではお馴染みの信楽焼のたぬきが入口で出迎えてくれた。

アンテナショップではなく”情報発信拠点”

「ここ滋賀」の店内には、滋賀県内のお土産や伝統工芸品、県民に愛されるご当地食材など約1000商品がずらりと並んでいる。ここに並んでいるのは、厳選された売れ筋商品や王道の商品ばかりではない。バイヤーは売れ筋商品、王道商品を厳選するのではなく、滋賀県の魅力を伝えてくれる商品を発掘する。ここで滋賀県をPRする魅力ある商品があれば、積極的に滋賀県内の事業者に声をかけて、ここ滋賀に商品を置いているという。

商品を販売することだけをこの店舗の目的にしていれば、商品がいくら売れたか、売上がどれくらい伸びたかのみ求められる。しかし、これまでに実施したお客様アンケートでは、何かを買いに訪れたという訳ではなく、たまたまここを入ってみたという人が多かったという。この立地だからこそ、滋賀県とのふとした滋賀との出会いがある。ここ滋賀をきっかけに、偶然滋賀県に触れたお客さんの、より多くが実際に滋賀県を訪れてくれることが重要なのだ。

「買うこと、食べることを通じて滋賀県の魅力を感じてもらい、滋賀県に行きたいと思ってもらうことが、ここ滋賀の役目だと考えています。ここ滋賀は、『滋賀県の情報発信拠点』なんです。」と深井さんは話す。

都心で滋賀県のひと・もの・ことが交流する場

ここ滋賀にはほかにもアンテナショップとは異なる点がある。それは、商品を販売するだけではなく、県内の事業者やその商品をPRすることだ。東京という土地柄、店には滋賀県の商品を探すバイヤーさんが訪れることもあり、ここから商談に発展することもしばしばある。

また、滋賀県のメーカーが実証実験をしたり、商品をPR販売する場としての機会を提供している。ちょうど2022年7月には、滋賀県内の製造メーカーが、入り口に機械を取り付け、ここ滋賀の前を通る人のうちどれくらいの人がここ滋賀に入っているのかをカウントする実験をしていた。

不定期で開催するイベントは、お客さんに滋賀県の魅力をさらに知ってもらえる機会になっている。ヨシ(葦)を使ってアクセサリーを作るワークショップや漁師さんとお話しできるびわますの試食販売など、どれも人気のイベントだ。特に、子供向けのワークショップは人気が高く、すぐに予約が埋まってしまうそうだ。滋賀県のものづくりに直接触れてもらうことや、滋賀県の人と交流してもらうことができる。

ここ滋賀では、滋賀県で活動する事業者・県民が、滋賀県外でより活躍するきっかけとなる場所として、貢献している。

東京にある滋賀県で何が求められるのか

 高島屋、日本生命、日本旅行、ふとんの西川。日本橋には近江商人をルーツとする滋賀ゆかりの企業が現在でも多く存在している。五街道の起点である日本橋は、江戸時代から人やモノの往来が盛んだった。東京と京都を結ぶ東海道や中山道で、江戸の物流の一翼をになっていた「近江商人」の足跡は今も息づいている。

琵琶湖の長い歴史の中で育まれた文化のひとつである地酒や湖魚の食文化は、滋賀県の特徴である。ここ滋賀には、これらを気軽に試してもらえるように、地酒バーが設置されている。

地酒は、東日本や北日本では淡麗辛口という共通の特徴で括られることが多いが、滋賀県をはじめとして西日本ではそれぞれにお米の旨みの特徴がある。琵琶湖の周りには30以上の酒蔵があり、それぞれの特色ある地酒から好みのブランドを探すのも楽しみである。

また、東京では湖魚を食べる文化は珍しく、淡水魚に馴染みがない。そこで、手にとってもらうきっかけになるように、オリジナルPOPを作成したり、地酒バーで試すことができるようにしたりと、ここ滋賀で発見があるような工夫をしている。

滋賀らしさを詰め込んで

ここ滋賀がオープンした当初は、店内に並ぶ商品もディスプレイも、百貨店や老舗の専門店が立ち並ぶ日本橋らしく高級感のあるレイアウトにしようと背伸びをしていたところがあった。しかし、ここ滋賀は滋賀県の魅力を伝える場所。滋賀県出身の人たちや滋賀県を訪れたことのない都心の人が、本当に求めているものは何かを改めて考えたという。

「滋賀県は田舎と言われることがありますが、それはまさに滋賀らしさだと思うんです。滋賀だからいい、滋賀にしかない、というものは素敵ですよね。」と深井さんが話すように、滋賀県でお馴染みの商品も多く、商品がずらっと並んだ店内は、現在はマーケットのような賑わいがある。

2022年秋にオープンして5周年を迎えるのを前に、リニューアルオープンした「ここ滋賀」。リニューアルでは、滋賀らしさをもっとアピールするための工夫として、入って正面の壁に白鬚神社のパネルや、ビワイチをPRする自転車を設置した。ふらっと入ってきたという人も多いからこそ、入ったところから滋賀県を感じてほしいという思いが込められている。

「滋賀県民と都心の人々の交流の地点として、これからもここ滋賀で滋賀県の情報・魅力を発信していきたい。」と深井さんは意気込みを語ってくださった。