滋賀県の夏の風物詩のひとつ、彦根市・松原湖岸で開催される「鳥人間コンテスト」。番組を制作する読売テレビでは、2021年に「サステナビリティ部」を発足し、「ytvサステナビリティ・プロジェクト」を立ち上げています。
その理由のひとつに「鳥人間コンテストだけでなく、より琵琶湖とのつながりを深めたい」との思いがありました。今回は「鳥人間コンテスト2024」の会場にお邪魔し、2022年よりESG推進局サステナビリティ部長を務める山川友基さんに、読売テレビとMLGsとの関係や活動内容についてお話を伺いました。
「鳥人間コンテスト2024」とMLGs
――今年で第46回 を迎えた「鳥人間コンテスト」について、今の思いをお聞かせください。
鳥人間コンテストは、琵琶湖の自然を舞台に使わせていただき、長年続けてきた大会です。ただ、時代の変化とともに、環境保全や地域の方々との共生を抜きにしては、持続できないと、非常に危機感を感じています。MLGsと出会ったのは、新しいコンセプト、新しい目的を必要とするタイミングでした。
MLGsを読み込んでいくにつれて感じたのは「これは一緒にコラボレーションしていくべきもの」だということです。いろいろなところで少しずつ認知を広め、現場で理解を深めてきました。
その結果、今回の鳥人間コンテストスタッフTシャツ約500人分へのMLGsのロゴと、約5,000冊の公式パンフレットへの「鳥人間コンテストはMLGsを応援しています」の文言実現に至っています。
――MLGsとのコラボが始まったきっかけについて教えてください。
読売テレビは、24時間テレビの環境保護活動支援の一環として、2006年から「びわ湖プロジェクト」を通じて、びわ湖の環境美化活動に協力していました。そこで滋賀県琵琶湖政策・MLGs推進担当の三和伸彦さんよりMLGsの話を聞き、24時間テレビ内でMLGsのPR展示をするところからスタートしています。
山川友基さん・三和伸彦さん(滋賀県理事員 琵琶湖政策・MLGs推進担当)・柿本幸一さん(読売テレビ制作局長)
さらに2021年12月には、滋賀県と読売テレビで何かできないかとアイデア出しを行いました。そして、その後の意見交換などを通じて、鳥人間コンテストとしての関わりが生まれたんです。2023年夏には、サステナビリティ部と滋賀 県立琵琶湖博物館がコラボし、鳥人間コンテストと環境との共生をテーマにした企画展を行うなどの取り組みを重ねて、少しずつ関係性が深まってきました。
2023年8月に開催した滋賀県立琵琶湖博物館での鳥人間コンテストイベントの様子(提供:読売テレビ)
「ytvサステナビリティ・プロジェクト」HP掲載記事
https://www.ytv.co.jp/sdgs/articles/articles_81tlxj43zf036vcg.html
IVUSAのメンバーと共に活動
――会場ではNPO法人 国際ボランティア学生協会 IVUSAの方々が活動されていますが、彼らと出会いのきっかけを教えてください。
IVUSAは、以前より滋賀県と一緒に琵琶湖の清掃活動 や琵琶湖外来水生植物の除去 などの活動を続けている団体です。三和さんも三日月知事もご存知で、滋賀県立琵琶湖博物館の学芸員の先生も一緒に駆除活動などに参加していると知りました。
私たちが探していたのは、琵琶湖を清掃活動する若者パートナーです。そこで、すぐにIVUSAにコンタクトを取りました。
鳥人間コンテスト自体、学生や若者がたくさん参加する大会です。彼らに声をかけたところ「自分たちは、チームで機体をつくり記録を出すために活動している参加者と同じくらい、琵琶湖をキレイにしていくという強い思いと情熱を持っています。だから一緒にやりたいです」と言ってくれました。
彼らの存在は、すごく大きいです。MLGsをきっかけに、こうしていろいろなつながりが生まれていくことを嬉しく思います。
MLGsを通じて実現した、新しい価値の再定義
――鳥人間コンテストは、かなりの長寿番組ですね。
ありがとうございます。ただ、何ごとも始まりがあれば、終わりがあります。ただ、価値を再定義し、未来につながる新しいメッセージやコンセプトを付加できれば、新しい番組に生まれ変われるはずです。鳥人間コンテストは、今、ちょうど転換点に来ているんじゃないかと思います。
学生たち が大会に参加する理由は、単に機体をつくり、飛行距離を延ばすだけではありません。彼らこそ、琵琶湖という自然の中で行う意義に対して敏感な世代だと思います。大会では、2023年から新たに「環境賞」を作りました。すでに環境を意識した機体を製作するチームも出てきています。
――「MLGs賞」があっても面白そうですね。
いいですね。滋賀県がオーソライズする形になれば、彼らにとっても1つのブランドになります。MLGs賞、いいと思います。
――MLGsとのコラボを経て、得たものがあれば教えてください。
私たちの取り組みを見つめ直すきっかけができたと感じています。鳥人間コンテストは、自然の中で、かつ化石燃料を使わずに人力で取り組む魅力を伝えてきた大会です。すごくエコな取り組みをやっていたんだと、改めてその価値に気づくことができました。
MLGsと連携する「ytvサステナビリティ・プロジェクト」
――MLGsとのコラボが番組価値の再構築に役立ったことは、大変喜ばしいことです。読売テレビにも「ytvGOALS」があると伺いました。
ytvGOALSは「読売テレビは、放送局・報道機関として、持続可能な社会に対してどのような役割を果たせるのか」という「ytvサステナビリティ・プロジェクト」を進めるために大切にしている目標です。ただ、ytvGOALSの中身を考える過程において「SDGsではダメなのか」という声があがりました。
そこで、一例として出したのが、滋賀県版SDGsのMLGsです。これは滋賀県の地域の人たちやいろいろなステークホルダーが集まり、自分ごととして考えたものだと伝えました。
MLGsのロゴとytvSDGsのロゴ
我々にも、読売テレビの社員、社外スタッフ、出演者などたくさんのステークホルダーがいます。世の中の人から「読売テレビがあってよかった」と思われる会社になるために、必要な課題設計をボトムアップで議論し、最後に機関決定しました。
滋賀県・琵琶湖とともに育む新たな関係
――MLGsとの活動を含めた、今後の展望についてお聞かせください。
2025年には、大阪・関西万博が開催されます。滋賀県としての「滋賀県ウィーク(仮称)」「滋賀県デイ(仮称)」 の開催にあたり、私たちも何かお手伝いできることがないかと、話をしている最中です。MLGsをきっかけに、滋賀県とのパートナーシップの再確認、再定義を進めています。
――最後に、琵琶湖に関わるすべての人へのメッセージをお願いします。
鳥人間コンテストは、琵琶湖を舞台に使わせていただいている唯一無二の番組です。私にとっても、琵琶湖に対する親近感や愛着は、本当に強いものがあります。
原点への立ち返りと新しい価値を生み出す大切さに気づいた今、これまで以上に地域のみなさんと一緒に、新しい価値を生み出し、地域にお返しをしていきたいとの考え方で進めていきたいです。