こんにちは。
MLGs案内人の畠 麻理奈です。
「MLGsなひと」は、びわ湖版SDGsであるMother Lake Goals(MLGs)にどのような人が関わっているのか紹介するシリーズです。
今回から5本立てで、MLGsに関わる活動において特に活躍されているMLGs案内人幹事の皆様にお話を伺います。
第1回は、琵琶湖環境科学研究センターの佐藤祐一さんです。
佐藤さんは、MLGsが公開される10年以上前から滋賀県における市民らとの協働に目を向け、多くの層にアプローチできるコミュニティや仕組みづくりを行ってこられました。
Q:琵琶湖環境科学研究センターでの研究活動について教えてください。
ー研究として取り組んでいることは大きく2つあります。1つ目は、多様な主体との協働に関する研究・活動で、市民が行政や研究者らと協力して身近な自然環境を回復したり、そのための計画をつくったりするにはどうすれば良いか考えています。例えば、野洲市ではビワマスが川で産卵・繁殖する環境を整えるために魚道をつくったりしていますし、そういった活動を推進するためにMLGsやその前身のマザーレイクフォーラムを運営してきました。2つ目は、計算用のコンピューター(我々の分野では計算機といいます)を使った水質や生態系のシミュレーションです。最近では、その知見を応用して滋賀県の新型コロナウイルス関連の分析にも関わっています。今後どのくらい感染者が増加するか、また病床が必要となるかなどを予想して、行政や関係機関に情報を提供しています。
Q:MLGs案内人幹事としての役割はどんなものですか。
ー私は、MLGsの策定段階からコアメンバーとして関わってきましたが、今年度からは幹事代表として、主にMLGsを推進する上で必要なことやMLGsに関わる人のことを考える全体統括のようなポジションで動いています。幹事ではない案内人の皆さんにはそれぞれ得意な分野があり、様々なワークショップを企画運営くださっていますので、その全体を把握して、さらに活動の創発を生み出す仕組みを考えていくのも私の役割です。
Q:MLGsの前身であるマザーレイクフォーラムの取り組みについて教えてください。
ーマザーレイクフォーラムは、簡単に言うと琵琶湖に関心のある人たちが集まる1つの場であり、コミュニティだと思っています。2000年代まで遡りますと、当時は環境問題に対して行政がメインで動くことが多く、今でも「市民参加」という言葉があるように、あくまでも行政が中心でそこに市民が参加するという形でした。それを、市民、事業者、行政、研究者らがフラットな関係でいられる状態にしたかったんです。そこで、2011年にマザーレイクフォーラムを立ち上げ、”びわコミ会議”という話し合いの場を開催し、年に一度、琵琶湖に関する現状の共有と、今後どうしていけばいいかなどについて話し合ってきました。一方、2010年代後半になると、その「場をつくる」というやり方に限界を感じるようになりました。マンネリ化してきたというのもあるのですが、場に集まる人が固定化し、それ以外の人には声をかけて集まってもらわなくてはならなくなってきたのです。場を提供するのではなく、それぞれが自由に、自発的に活動できるようになればいい、そのための支援や情報共有の仕組みを作る方がよいのではないかと思うようになりました。例えば、こども食堂。あれは統括する中央組織があって指示して広めているのではなく、あくまで地域の人たちの自発的な活動で、その素敵さに惹かれた人がどんどん広めていきましたよね。そんな感じで、それぞれが自らの思いをベースに活動をして、社会的なインパクトを起こせる環境を琵琶湖にもたらせたら、という願いで今のMLGsの取り組みを進めています。
Q:MLGsのワークショップについて教えてください。
ー今私がコアに関わっているものとしては、「びわ湖の研究者になろうツアー」があります。NPO法人国際ボランティア学生協会(IVUSA)さんとのコラボで、3月には手作り浄水場を作るワークショップをしました。IVUSAの学生さんらが企画から準備、運営までしてくれて、琵琶湖の水環境について子どもが自ら考えるプログラムを実施しました。ペットボトルを使って、実際にどのように水が綺麗になるのかを体験してもらったのですが、子どもたちが真剣に水のことを考え、実験し、考察して発表している姿には感動しましたね。私はアドバイザーとして専門的な観点から水が綺麗になる仕組みを解説したり、大津市企業局さんをご紹介したりといったことをしました。IVUSAの学生さんたちは、参加した子どもたちの成長を見ていると思うのですが、私は同じようにIVUSAの学生さんたちの成長や進化を見ています。経験を積むことの大切さを実感しますね。(レポートはこちらから)
Q:琵琶湖とのおすすめの関わり方を教えてください。
ーGoal2・Goal10・Goal11
私は湖魚を調理するのがすごく好きで、琵琶湖で楽しむことが趣味のような感じになっています。好きなことや遊びから見つける気づきは非常に貴重だと感じていて、原体験としていろいろなことを経験するのはすごく大切だと思います。例えば、県外の方はよく琵琶湖をみて綺麗だと言いますが、地元の人からすれば「一見綺麗だがその裏には色々なことがある」といった違和感に気づくことができますよね。水が綺麗なところやそうでないところ、生きものが多くいるところやそうでないところなど、多様な環境を知ると、物事を相対的に見られるようになって、違和感や「?」が増える気がしています。
Q:最後に、若い世代へのメッセージをお願いします。
「自分で感じた疑問を、とことん考えて、突き詰めて欲しいと思います。自分で感じる「?」はとても大事です。僕自身、”川の開発と環境のバランス”という、当時誰もやっていないことに関心を持ち、前例のない研究内容を大学生のときに扱い、その内容で博士号を取得するほどのめり込みました。私は大学時代は大して授業も行かず暇だったのですが、暇な時間に答えのないものを延々と考え続け、追求し、彷徨った経験が土壌になっていると日々感じています。そのような経験は非常に大事ですが、今の学生や若い人は忙しくて、そのような時間がなかなか取れないのが少しかわいそうな気がします。でも何とか暇な時間を作って、大学の授業で学べることだけではなく、”自分でとことん考えて突き詰める”経験をして欲しいなと思います。オリジナリティやクリエイティビティは、そうした問いから生まれます。1を10にするのではなく、0を1にすること意識して、たくさんのことに挑戦してほしいと思います。」