MLGsニュース

【MLGsアクション】彦根工業高校マイスター・ハイスクール事業

 

こんにちは。

MLGs学生ライターの戸簾(龍谷大学4回生)です。

滋賀県立彦根工業高等学校(以下、彦根工業高校) が実施するマイスター・ハイスクール事業は、生徒による少人数グループで取組を行う「カンパニー制」で進められており、そのカンパニーのうち、MLGsアクションを実践されている「カーボンニュートラルを学ぶ」と「百人一首製作隊」の取組について、取材しました。

彦根工業高校のマイスター・ハイスクール事業について

彦根工業高校は「変化への挑戦(Challenge for Change)~進取の気性を生かし持続可能な新たな地域産業を共創できる技術人財の育成~」を目標に、関西唯一のマイスター・ハイスクール認定校として様々な事業を実施しています。本事業では、1年生から3年生まで一貫したマイスター教育により、既存の工業高校の固定概念にとらわれない視野を持つことや、自分たちの進路のイメージを成功体験から実感できるような事業設計がなされています。

マイスター・ハイスクールの概要

 

令和5年2月22日(水)に実施されたマイスター・ハイスクール事業の成果報告部門では、マイスター・ハイスクールCEO 青木 政義 先生(株式会社SCREENホールディングス)が、彦根工業高校の活動を学校関係者や企業関係者に紹介し、生徒が実社会で活躍するイメージを共有されたそうです。

マイスター・ハイスクール事業の成果発表会

 

彦根工業高校マイスター・ハイスクール事業については、こちらからご覧ください。

菜の花由来のバイオプラスチック素材による環境に配慮したものづくり

この取組は先ほどのマイスター・ハイスクール事業でも、少人数制のグループでものづくりや社会に貢献できるプロジェクトを自分たちで企画し、活動を進める「カンパニー制」の1つとして、実施されています。

菜の花由来のバイオプラスチック

さらに、この取組には、株式会社ユーグレナと、株式会社バイオマスレジンホールディングスに協力いただき、材料開発や原料加工などの支援から製品ができるまでの一連の企画を生徒が主体となって行っています。

この活動のきっかけは、マイスター・ハイスクール事業を実施するにあたり、生徒たちを中心に教職員が、産業界でも推進が進むSDGsを、工業高校として取り入れたプロジェクトをしたい、と考えていたことが始まりです。

ちょうどその頃、滋賀県立大学山根浩二副学長による藻類を利用したバイオエネルギーなどを題材とした、「未来のエネルギー」という講義が行われました。その中で、このような事業に積極的に取り組む株式会社ユーグレナについて調べていくと、水質改善の実験(東京都、佐賀県)や農作物への発育寄与、CO2削減といった環境に配慮した取組や、会社の定款自体を「SDGs」仕様に変更されたことなど、「産業×SDGs」の面から非常に興味深い取組をされている事が分かりました。そこでマイスター・ハイスクール事業への協力を打診したところ、協力をいただけることとなり、まずはバイオディーゼルの抽出を目的としたプロジェクトを進めることになりました。

2021年・2022年にバイオディーゼルの抽出を目的として菜の花やひまわりを、ユーグレナの粉末を入れた培養土を用いて栽培し、一般的な培養土との違いを考察したり、そこから油分の採取を試みたりする授業を行いました。しかし、バイオディーゼルを抽出することは、県内の小学校で実施事例があり、工業高校らしさは何か真剣に考えました。

生徒みんなで活動を進めている

そのような状況で、地元企業の方に相談したところ、米を原料にしたプラスチック素材を開発している株式会社バイオマスレジンホールディングスを紹介していただき、菜の花の絞りかすを原料にした菜の花バイオプラスチック(菜の花レジン)の開発を検討しました。当初は、菜の花の絞りかすでの開発実績が無いことなど、実施にあたり難しい問題がありましたが、生徒の学びに向けて粘り強く交渉し、試作品が運よく完成し、今に至ります。

このような環境に配慮した活動や、地域の資源を使った産業を通じて、SDGsのようなムーブメントの価値を考えるとともに、滋賀県でも取組が進んでいる琵琶湖版SDGsであるMLGsとも深く関わりが出てきたと思います。本取組の成果物は、滋賀県が提供するふるさと納税の返礼品としても採用され、「Goal 9|生業・産業に地域の資源を活かそう」にも資する取組になっています。

滋賀県のふるさと納税に採用された偉人プレート

活動に参加する生徒へのインタビュー

彦根工業高校でマイスター・ハイスクール事業に関わる2つのカンパニー(カーボンニュートラルを学ぶ、百人一首製作隊)の生徒の皆様にインタビューを行いました。

カンパニー名:カーボンニュートラルを学ぶ

左から順に、寺田さん、角田さん、北村さん、小杉さん

 

〇寺田 悠希さん(電気科)

工業のみ考えるのではなく、多面的に考えたいと思いました。実際、この活動では工業高校で行うこととは全く違うことを体験することができました。また、植物が関わると、環境に優しいという面では、再生、分解などの考えが強く、工業的な側面では、長持ちするかどうかが大切というトレードオフの考え方を知ることができました。他にもこの活動を通じて、適材適所な考え方を持たなくてはいけないということを改めて知ることができました。

〇小杉 陸人さん(機械科)

実家が農家で、肥料などに少し興味があり、学校で行われていたユーグレナに関するイベントなどに参加し、この活動に関わるようになりました。活動では、菜の花レジンを板状にする際に温度・位置の調節などを行い、試行錯誤することや集中する力をつけることができました。今後は環境系の大学に進みたいと考えるようにもなりました。

〇北村 永久さん(建設科)

入学当初は、彦根工業高校でこのようなことを行っているとは全く知りませんでした。しかし自分自身で、環境やSDGsに関する学習を続けている中、ユーグレナやミドリムシがどのようにカーボンニュートラルに関わっているか等を知ることができました。この活動を始めるまでは、実際に自分たちで菜の花やひまわりを育てるなんて考えもしませんでした。しかし種から油を絞り、そのかすからプラスチック原料を作るなど、工業的な所に繋がっていく工程が非常に面白く感じました。

〇角田 亮太さん(電気科)

元々は、内申点が欲しかったという軽い気持ちで参加していました。しかし、参加していくうちに、大気汚染やカーボンニュートラルなどの環境課題を知り、自然由来の原料などの可能性などを知りました。その結果、今後は環境系の大学に進みたいと考えるようにもなりました。

カンパニー名:百人一首製作隊

左から順に、北村さん、北川さん

 

○北川 尚貴さん(機械科)

滋賀県には、小倉百人一首巻頭歌や天智天皇のゆかりがある近江神宮、紫式部のゆかりがある石山寺など、百人一首のモチーフとなる場所が多数あることから、百人一首のデザインを行うことを決めました。実際のデザインは任天堂から、かるたの絵柄の使用許可をいただき、製作することができました。また、本物の遊びとして使える百人一首ではなく、まずは多くの人に知ってもらうための展示物としての製作を考えました。こだわったポイントとしては、レーザー加工機+塗料で色付けを行い、細かな所まで再現している点です。最初は一個作るために2-4日ぐらいかかっていましたが、慣れてくると1日で作成できるようになりました。このような経験は細かい作業をするため、集中力があがり、授業にも役立っています。

○北村 一喜さん(機械科)

小学生の時にプラモデルをもらったり、中学生でものづくり教室に参加したりと、ものづくりが好きで彦根工業高校に進学してきました。しかし、初年度ではなかなか、ものをつくる機会が少ないこともあり、自分自身で何かを作る体験をするために、この活動に参加しました。特に、昨年度先輩方が作ってきた菜の花レジンのプレートで新しいものを作る体験から、新しいもの作りをするために、今ある手法や素材を使ってどのように新しいものを生み出すかを考えることができました。

 

以上、高校生によるMLGsアクションでした。

これからもMLGsに関する若い世代の取組を、MLGs WEBで積極的に発信していきたいと思います。